
「勉強しなさいと言っても、なかなか机に向かわない」
「以前は楽しそうに学んでいたのに、最近は自信をなくしている」
「子どものために何かしたい。でも、どのように関わればよいのだろう」
子育てや家庭学習について、こうした思いを抱えている保護者の方は少なくないと思います。
小金井市の個別指導塾・聡生館では、小学生・中学生・高校生の学習指導を通じて、子どもたちの成長と、その歩みを支えるご家庭に向き合ってきました。そこで大切にしているのは、目の前の点数だけで、その子の可能性を判断しないことです。
答案の向こうには、一人ひとりの気持ちがあります。わかるようになりたいという願いも、何度やってもうまくいかない悔しさも、周囲には見せない不安もあります。その気持ちに目を向けながら、学習の内容や進め方を考えることが、指導の出発点だと考えています。
このたび、そうした教育への思いを一冊にまとめた家庭教育ブックレットが完成しました。
『子どもの未来は、家庭から育まれる』
― AI時代を、自分らしく生きる力を育てる ―
教育学・脳科学・発達心理学の視点を取り入れながら、家庭での日々の関わり、子どもの心と学び、そしてこれからの時代を生きる力について考える冊子です。
著者は、聡生館で指導にあたる乙幡和重です。一般社団法人 自在能力開発研究所の代表理事として、また、長年子どもたちの教育に携わってきた一人として、保護者の皆さまと共有したいことをまとめました。
今回のブログでは、このブックレットに込めた思いと、聡生館の学習指導につながる考え方をご紹介します。
「家庭から育まれる」という言葉には、家庭だけで子どもの未来を背負ってほしいという意味はありません。
子どもの成長には、学校、地域、友人、学習環境など、さまざまなものが関わります。保護者がどれほど努力していても、思うようにいかない時期はあります。学習のつまずきや登校の難しさを、家庭の責任だけで説明することはできません。
それでも、毎日の暮らしの中には、子どもの支えになる小さな機会があります。
帰宅したときに声をかけること。話を途中で遮らずに聞くこと。結果が出なかった日にも、その日取り組んだことに目を向けること。困ったときに、一緒に考えてくれる大人がいると伝えること。
特別な教材を購入した日だけが、教育の日ではありません。食卓での会話や、眠る前の短いやり取りにも、子どもが自分をどう捉え、次の一歩をどう選ぶかに関わる大切な時間があります。
本冊子でお伝えしたいのは、そのような日常の関わりを、ご家庭の無理のない範囲で見直してみませんか、ということです。
私自身、研究に携わっていた時期を経て、教育の現場で三十年以上、子どもたちと向き合ってきました。
研究では、目の前の現象を丁寧に観察し、原因を考え、仮説を立て、確かめます。教育でも、わからない問題を見たときに、すぐ「努力が足りない」と結論づけず、何が起きているのかを見極める姿勢が必要だと感じています。
例えば、文章題が解けないとき、計算方法が身についていないのかもしれません。問題文の言葉を理解できていない場合もあります。何を求める問題なのかを整理するところで、止まっていることもあります。
同じ不正解でも、必要な支援は異なります。
また、解き方を理解していても、「また間違えたらどうしよう」という気持ちから、手が止まる子もいるでしょう。そうした場合、問題数を増やすだけでは、取り組みやすくならないことがあります。
だからこそ、学習内容とともに、取り組むときの様子や気持ちも見ていく必要があります。本冊子は、そのように子どもを理解する視点を、保護者の方にも持っていただける一冊にしたいと考えて制作しました。
学習相談では、どうしてもテストの点数や通知表の評価が話の中心になります。もちろん、それらは現在の学習状況を知るための大切な情報です。受験を控えていれば、合格に向けて到達点を具体的に考える必要もあります。
ただ、点数に表れる前の変化にも、目を向けていただきたいと思います。
昨日までは問題を見ただけで諦めていた子が、今日は一問だけ考えてみた。わからないところを隠していた子が、「ここを教えて」と言えた。答えを書き写していた子が、自分の言葉で説明しようとした。
こうした変化は、すぐに得点へ反映されるとは限りません。しかし、次の学習につながる具体的な前進です。
「まだ点数が上がっていない」と感じるときにも、その子の取り組み方がどう変わったかを見てみる。その視点があると、家庭でかける言葉も変わってきます。
「何点だった?」に加えて、「前よりわかるようになったところはある?」と聞いてみる。「どうして間違えたの?」と問い詰める前に、「どこから難しくなった?」と一緒に問題を見てみる。
点数を確認することと、学びの過程を受け止めること。その両方を大切にしていきたいと考えています。
また、子どもへの声かけは、単に優しい言葉に置き換えればよいというものでもありません。必要な課題や約束を曖昧にせず、本人が取り組める形にすることが大切です。
例えば、宿題が進まないときに、「早く全部終わらせなさい」と言われても、何から始めればよいかわからない子がいます。
そのときは、「まず最初の二問をやってみよう」「今日は漢字を五つ確認しよう」と、取り組む範囲をはっきりさせます。そして、終わったところを確認し、次に進めるかを考えます。
うまくいったときには、「すごいね」だけでなく、「途中の式を書いたから、間違えた場所が見つかったね」と、何がよかったのかを具体的に伝えることができます。
毎回、理想的な声かけをする必要はありません。忙しくて余裕のない日もあるでしょう。言いすぎたと感じたら、後から「さっきは強く言ってしまったね」と伝えることもできます。
家庭教育を考えることが、保護者の新しい負担になってしまっては本末転倒です。この冊子が、ご自身を責める材料ではなく、少し関わりやすくなるための手がかりになればと願っています。
聡生館が大切にしている「学び直し」も、この考え方とつながっています。
今の学年の問題が難しいとき、必要に応じて以前の内容に戻ることがあります。中学生が分数の計算を確認することも、小学校高学年の子が基本的な言葉の意味から学ぶこともあります。
その際に気をつけたいのは、「こんなこともできないのか」という見方をしないことです。戻る場所がわかったということは、どこから学び直せばよいかが見えてきたということでもあります。
大切なのは、教材の学年表示だけにとらわれず、その子が理解を積み上げられる位置から始めることです。
一方で、基礎に戻るだけで、すべてが解決するわけでもありません。学校の授業や定期テスト、受験までの時間も考えながら、復習と現在必要な学習を組み合わせる必要があります。
聡生館では、一人ひとりの理解度や目標を踏まえ、何を優先し、どのような順序で取り組むかを考えます。家庭とも状況を共有しながら、続けられる学習へと整えていくことを重視しています。
本冊子に込めた「再設計」という考え方も、ここにあります。今の方法で進みにくいのであれば、課題の量、説明の仕方、学習する順序、周囲の関わり方を見直していく。子どもの未来を考えるとき、大人の側にも工夫できる余地があります。
副題には、「AI時代を、自分らしく生きる力を育てる」という言葉を入れました。
AIについて考えるとき、教育では「何を覚えなくてもよくなるのか」に関心が向きがちです。しかし、私は、子ども自身が何を知りたいと思い、どのように考え、得られた答えをどう受け止めるかを、より大切にしたいと考えています。
便利な道具を使って説明を得ても、その説明の意味を読み取る力が必要です。示された答えが適切かを考えるには、基礎的な知識や、自分で確かめる姿勢も欠かせません。
算数や数学で筋道を追うこと。国語で言葉の意味や文章のつながりを考えること。理科で予想と結果を比べること。社会で立場や背景の違いに目を向けること。学校での学びには、こうした力を練習する機会があります。
家庭でも、「それはどうしてだと思う?」「どこで確かめられるかな?」という会話から、考える時間をつくることができます。
答えをすぐに言えることだけを評価せず、問いを持つことや、自分の考えを説明しようとする姿も大切にしたい。その思いを、本冊子の中でもお伝えしています。
冊子には、家庭で使える付録として、発達チェックリスト、家庭教育カルテ、「できた!」記録シート、未来ノート、家庭教育十か条なども盛り込みました。
読んで終わるだけでなく、ご家庭の様子を振り返ったり、子どもとの会話を始めたりするきっかけにしていただくためのものです。
チェックリストは、子どもに点数をつけたり、診断をしたりするためのものではありません。「この場面では困りやすいのかな」「こちらの伝え方なら取り組みやすいのかな」と、その子を知るために使っていただきたいと思います。
「できた!」の記録も、大きな成果だけを書く必要はありません。
自分から教材を出した。昨日より落ち着いて取り組めた。困っていることを言葉にできた。そうした小さな出来事を残すことで、日々の忙しさの中では見落としやすい変化を、親子で振り返ることができます。
すべての付録を使おうとせず、今のご家庭に合うものを一つ選んでいただければ十分です。
さらに、特別コラムでは「自学ノート」も取り上げました。
自学ノートは、問題をたくさん解いたことを示すだけのノートではありません。気になったことを調べたり、学んだことを整理したり、自分の考えを書き留めたりする場所にできます。
例えば、理科の実験で予想と結果を並べて書く。読んだ文章の中から気になった言葉を選ぶ。算数で間違えた問題について、次に気をつけることを一行残す。工作で工夫したところを、絵と文章で説明する。
最初から美しいノートにする必要はありません。文章が短くても、図が中心でも、その子が何を見て、何を考えたのかが表れていれば、そこから対話を始められます。
大人は、書き直しを求める前に、「ここがおもしろいね」「これはどう考えたの?」と聞いてみる。子どもが自分の学びを説明する時間を、大切にしていただきたいと思います。
一日の一ページは小さくても、後で振り返ったとき、自分が取り組んできたことを確かめられる記録になります。
このブックレットには、学習のことだけでなく、子どもの心の変化や、学ぶことに向かいにくい時期について考える視点も盛り込みました。
聡生館での学習指導と、フリースクール・発達支援のスプラウツで大切にしていることには、共通する土台があります。それは、今の姿を丁寧に理解し、その子に必要な関わりを考えることです。
受験に向けて力を伸ばしたい子にも、学習の基礎から取り組み直したい子にも、まず安心して過ごす時間が必要な子にも、それぞれの歩みがあります。
その歩みを、周囲と同じ速さにそろえることだけを目標にはしたくありません。一人ひとりの状況を受け止めながら、必要な課題に向き合い、選べる道を少しずつ広げていく。そのために、家庭と教育の場が協力していければと思っています。
本冊子の中には、「未来は、何度でも再設計できます。」という言葉を置きました。
これは、願えばすべてが思いどおりになるという意味ではありません。現実の課題を見つめながらも、方法や環境を見直し、次の一歩を考え続けたいという思いを表した言葉です。
保護者の方にも、一人で答えを出そうとしないでいただきたいと思います。悩んだときに相談できる相手がいることは、子どもを支える大人にとっても大切です。
小金井市で個別指導塾をお探しの方、お子さまの家庭学習や学び直しについてお悩みの方は、聡生館へご相談ください。ブックレットに関心をお持ちの方も、どうぞお問い合わせください。
この一冊が、お子さまの姿を少し違う角度から見つめるきっかけになれば幸いです。そして、読み終えた後に交わす一言が、親子にとって、明日につながる温かな時間になることを願っています。
一般社団法人 自在能力開発研究所
代表理事・工学博士 乙幡和重
個別指導塾 聡生館
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