
「朝になると、子どもが学校へ行きたがらない」
「勉強の遅れが気になるけれど、無理をさせることも心配」
「子どもの発達について、家庭でできることを知りたい」
子どもの成長を願うからこそ、どう関わればよいのか迷うことがあります。見守ったほうがよいのか、背中を押したほうがよいのか。その判断に悩み、毎日のように考え続けている保護者の方もいらっしゃると思います。
小金井市でフリースクール・不登校支援・発達特性に応じた学習支援に取り組むスプラウツでは、子どもが安心して過ごせることを大切にしながら、一人ひとりの興味や理解度に合わせて学びを支えています。
このたび、そうした教育への思いを込めた家庭教育ブックレットが完成しました。
『子どもの未来は、家庭から育まれる』
― AI時代を、自分らしく生きる力を育てる ―
著者は、スプラウツで指導にあたる乙幡和重です。一般社団法人 自在能力開発研究所の代表理事として、また三十年以上、教育に携わってきた一人として、子どもの心と学び、家庭での関わり、これからの成長についてまとめました。
教育学・脳科学・発達心理学の視点を取り入れながら、保護者の皆さまが日々の子育てを振り返り、無理なく試せることを見つけていただくための一冊です。
「家庭から育まれる」というタイトルを見て、「親がもっと頑張らなければいけないのだろうか」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
けれども、この本は、ご家庭に責任や負担を上乗せするために作ったものではありません。
学校に行きにくくなる背景も、学習につまずく理由も、一人ひとり異なります。学校での人間関係、学習上の困難、感覚面の負担、心身の状態など、さまざまな事情が関わることがあります。家庭の接し方だけで説明できるものではありません。
保護者が一人で原因を探し続けたり、すべてを解決しようとしたりする必要はありません。学校や支援者と相談しながら、その子が過ごしやすい環境を一緒に考えていくことが大切です。
そのうえで、家庭には、日々の暮らしの中でできる関わりがあります。
すぐに答えを求めずに話を聞くこと。言葉にできない気持ちがあるかもしれないと考えること。思うように動けなかった日にも、子ども自身の存在を大切にすること。
本冊子のタイトルには、そうした身近な関わりが、子どものこれからを支える一つの土台になってほしいという願いを込めました。
登校しぶりや不登校について相談するとき、「どうしたら学校へ行けるようになるか」が中心になりやすいものです。学校とのつながりや、今後の見通しを考えることはもちろん必要です。
ただ、その前に確かめたいのが、「今、この子は何に困っているのだろう」ということです。
朝の支度のどこで動けなくなるのか。学校の話題になると、どのような様子になるのか。家ではどんな時間に表情が和らぐのか。人と会うこと、外に出ること、机に向かうことのうち、今は何が負担になっているのか。
理由を問い詰めるのではなく、日々の様子から少しずつ理解していきます。
本人にも、うまく説明できないことがあります。「どうして行けないの?」と聞かれても、答えがまとまらない場合もあるでしょう。
そんなときには、「今は話せなくても大丈夫」「困っていることがあったら、一緒に考えるよ」と伝えることもできます。話すタイミングや、伝える方法を子ども自身が選べる余地を残すことも、大切にしたいと思います。
スプラウツが重視しているのは、子どもが安心して過ごせることと、その子に合った学びの機会をつくることです。
学習の遅れが気になると、保護者としては「少しでも早く取り戻してほしい」と願うものです。その気持ちは自然なことです。しかし、今の負担や理解度に合わない課題を増やしてしまうと、取り組むことがいっそう難しくなる場合があります。
まずは短い時間から始める。問題数を少なくする。文章だけで伝わりにくければ、図や実物を使う。落ち着いて取り組める場所を考える。
学ぶことに向かいやすくするために、大人の側が調整できることがあります。
一方、安心して過ごせるようになったからといって、すぐに学習量を増やせるとは限りません。その日の体調や気持ちにも目を向けながら、取り組み方を考えていく必要があります。
本冊子では、子どもの心の変化と学びを切り離さずに見つめることを、大切な視点としてお伝えしています。
発達特性や学習上の困難があるお子さまについても、学年や年齢だけを基準に課題を決めることはできません。
同じ年齢でも、言葉の理解、数の感覚、手先の使い方、指示の受け取り方などには違いがあります。一つの説明で理解しやすい子もいれば、いくつかの段階に分けることで取り組みやすくなる子もいます。
例えば、「準備をして」と伝えるだけでは、何をすればよいか迷う場合があります。そのときは、「ノートを出そう」「次に鉛筆を置こう」と、一つずつ具体的に伝える方法が考えられます。
学習でも、できなかった結果だけを見ず、どこまでは理解できているのか、どのような助けがあれば進められるのかを確かめていきます。
その子の困り方に合った方法を探すことは、甘やかすことではありません。必要な課題に取り組めるように、伝え方や環境を整えることです。
そして、以前の学年の内容に戻ることも、学びを進めるための大切な選択肢です。
算数の計算が難しいときには、数の意味や基本的な操作を確認する。文章を読むことが難しいときには、言葉の意味や短い文の理解から取り組む。その子が理解を積み重ねられるところを探します。
「この学年なのに」と考えると、できていない部分ばかりが目に入りやすくなります。けれども、今の出発点が見えれば、次に取り組む課題も具体的になります。
スプラウツでは、こうした学び直しを、一人ひとりの様子に合わせて考えていきます。
子どもの変化は、テストの点数や登校日数だけでは捉えきれません。
自分から活動を選べた。初めての場所で少し過ごせた。わからないと伝えられた。途中で休憩しながら、課題に戻れた。
そのような姿も、その子にとっての大切な前進です。
ただし、一度できたことが、翌日も同じようにできるとは限りません。調子のよい日と難しい日があっても、一日だけで成長全体を判断しないようにしたいものです。
本冊子には、「できた!」記録シートなど、日々の様子を振り返るための付録を盛り込みました。
記録する目的は、毎日成果を求めることではありません。小さな変化を見つけたり、どのような条件で過ごしやすかったのかを考えたりするために使っていただきたいと思います。
子どもの興味も、学びを考えるうえで大切な手がかりになります。
スプラウツでは、理科実験や工作、ロボット製作などへの関心を、学習につなげることも大切にしています。
「どうして動くのだろう」
「前と違う形にしたら、どうなるだろう」
「この結果を、誰かに見せたい」
そんな気持ちから、観察する、比べる、数える、読む、説明するといった活動が生まれます。
もちろん、好きな活動をすれば、苦手な教科も自然にできるようになると決めつけることはできません。興味を入り口にしながら、必要な知識や技能を、無理のない形で学べるよう工夫していきます。
その一つとして、本冊子の特別コラムでは「自学ノート」を紹介しています。
実験で気づいたことを絵にする。作ったものの工夫を一言書く。気になった言葉を調べる。今日わかったことを短く残す。
長い文章を書くことが難しければ、写真や絵を使っても構いません。大人が話を聞きながら書き留める方法もあります。
きれいに仕上げることだけにこだわらず、その子が何に目を向け、何を考えたのかを、一緒に確かめる時間にしていただければと思います。
副題の「AI時代を、自分らしく生きる力を育てる」には、自分なりの疑問を持ち、考え、必要な助けを得ながら歩んでほしいという思いを込めました。
自分で学ぶことは、何でも一人でできることと同じではありません。
困ったときに質問する。説明の仕方を変えてもらう。自分に合う道具や方法を使う。そうした行動も、学び続けるうえで大切です。
子どもが自分の得意なことや難しいことを少しずつ理解し、周囲と相談しながら選択できるように、その過程を支えていきたいと考えています。
本冊子には、家庭教育カルテ、未来ノート、家庭教育十か条なども掲載しています。発達チェックリストも、ご家庭での様子を振り返るためのものであり、診断や子どもの評価を目的とするものではありません。
最初からすべてを読み、すべてを実践する必要はありません。気になるページを開き、「これなら試せそう」と思うものを一つ見つけていただければ十分です。
冊子の中には、こんな言葉を置きました。
「未来は、何度でも再設計できます。」
今、学校へ行きにくいこと。勉強が思うように進まないこと。周囲と同じ方法では取り組みにくいこと。それらを丁寧に受け止めながら、方法や環境を見直し、次の一歩を考えていく。その姿勢を大切にしたいと思っています。
小金井市でフリースクールを探す保護者の方、不登校・登校しぶりや、発達特性に応じた学習支援についてお悩みの方は、スプラウツへご相談ください。ご相談の際に、状況や気持ちがきれいに整理されていなくても大丈夫です。
ブックレットについても、どうぞお気軽にお問い合わせください。
この一冊が、お子さまを理解するための手がかりとなり、保護者の皆さまにとっても、少し肩の力を抜いて明日を考えられるきっかけになることを願っています。
一般社団法人 自在能力開発研究所
代表理事・工学博士 乙幡和重
フリースクール・発達支援 スプラウツ
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