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2026/08/16
聡生館
一度解けた難問は、いつ、何回解き直せば「自分の力」になるのか ― 脳科学と学習科学から考える、算数・数学の難問復習法 ―

算数や数学の難問に取り組み、自分で長い時間をかけて解答を研究したり、先生から詳しい説明を受けたりして、ようやく「分かった」と思えた。ところが、数日後に同じ問題を解いてみると、最初の一手さえ思い出せない――。

これは、算数や数学を学ぶ子どもたちに非常によく見られる現象です。

しかし、ここで「自分には数学の才能がない」と考える必要はありません。問題の解説を理解できたことと、その解法を自分の力として使えることは、脳の働きから見ても別の段階だからです。

小金井市の個別指導塾・聡生館では、難問が一度解けたことを「学習の終了」ではなく、「定着の始まり」と考えています。

では、難問はいつ、何回、どのような方法で繰り返せば、本当に自分の力になるのでしょうか。

「分かった」には三つの段階がある

算数・数学の問題に対する理解は、次の三段階に分けて考える必要があります。

第一段階は、解説を読んだり聞いたりすれば内容が分かる「理解」の段階です。

第二段階は、解答を見ないで、最初から最後まで自分で解き直せる「再生」の段階です。

第三段階は、数値や条件、図形の形、質問の仕方が変わっても、学んだ考え方を使える「転移」の段階です。

学習した内容が本当に定着したと言えるのは、第三段階まで到達したときです。

解説を聞いた直後には、先生の説明や解答の流れが頭の中に残っています。そのため、自分一人で解けるようになったと錯覚しやすくなります。しかし、それはまだ「説明を手掛かりにして理解している状態」にすぎないことがあります。

解答を閉じ、時間を置いた後でも、自分で必要な知識を呼び出し、解法を選択できるかどうかが重要なのです。

解答を読み返すだけでは定着しにくい

記憶研究では、学習した内容を繰り返し読むよりも、何も見ずに思い出そうとする「検索練習」が、長期的な記憶を高めることが示されています。

ローディガーとカーピックの研究では、繰り返し文章を読む学習よりも、内容を思い出すテストを行った方が、時間が経過した後の記憶保持に優れていました。直後には読み返した方がよく覚えているように感じても、数日後、数週間後には、自力で思い出す練習をした方が残りやすかったのです。

これは「テスト効果」「検索練習効果」と呼ばれています。Roediger & Karpicke, 2006

算数・数学でも、解答を何度も眺めることより、解答を閉じて白紙から解法を再構成することが重要です。

忘れかけた解法を苦労して思い出そうとする時間は、決して無駄ではありません。その努力そのものが、必要な知識へ到達するための記憶経路を強くしていくと考えられます。

難問は「解き方」ではなく「解き始め」を覚える

難問で最も大切なのは、計算の途中よりも「なぜ、その考え方を選んだのか」という最初の判断です。

例えば、図形の問題で補助線を引く場合、補助線の位置だけを覚えても、少し図が変われば対応できません。

大切なのは、

  • 問題文のどの条件に注目したのか
  • その条件から何を連想したのか
  • なぜ、その補助線や式が必要なのか
  • 他の方法では、なぜうまくいかなかったのか

を自分の言葉で説明できることです。

解答研究では、完成した式を写すだけではなく、「この条件を見たので、この考え方を使った」と、条件と解法を結び付けて整理する必要があります。

チーらの研究でも、解答例を学ぶ際に、それぞれの手順の意味を自分で説明する「自己説明」が、問題解決の理解を深めることが示されています。Chi et al., 1989

一度に何回も解くより、間隔を空ける

同じ日に一つの問題を連続して何回も解くと、その日は滑らかに解けるようになります。しかし、その滑らかさは、直前に見た解法が短期的に残っているためかもしれません。

長期的な定着には、学習を一日に集中させるより、間隔を空けて繰り返す「分散学習」が有効です。

セペダらは1,350人以上を対象に、復習間隔と長期記憶の関係を調べました。その結果、適切な復習間隔は「いつまで覚えておきたいか」によって変わり、長期間の保持を目指すほど、復習間隔も次第に広げる必要があることが示されました。Cepeda et al., 2008

ただし、すべての子ども、すべての問題に共通する絶対的な復習日程があるわけではありません。問題の難易度、本人の理解度、目標とする保持期間によって調整する必要があります。

そのうえで聡生館では、算数・数学の難問について、次のような復習間隔を一つの目安として考えています。

聡生館が勧める「難問の6段階復習」

1.解いた当日――解答研究をする

まず、自分の解答と模範解答を比較します。

「どこで止まったのか」「何の知識が不足していたのか」「解答の決定的な一手は何か」を整理します。

その後、解答を閉じて、白紙にもう一度解き直します。完全に再現できなくても構いません。どこまで自力で進めるかを確認することが目的です。

2.翌日――何も見ずに解く

翌日は、ノートや解答を見ないで、最初から解きます。

一晩置くことには意味があります。睡眠中には、新しく学んだ記憶の再活性化や整理が行われ、海馬と大脳皮質のネットワークが関わる記憶の固定が進むと考えられています。Rasch & Born, 2013

翌日に解けるかどうかを確認することは、単なる復習ではなく、記憶が自立し始めているかを確かめる機会になります。

3.3日後――同じ問題か類題を解く

翌日に解けなかった場合は、3日後に同じ問題を解きます。

翌日に自力で解けた場合は、数値、条件、図などを少し変えた類題に進みます。ここで確認するのは、解答の順番を暗記しているのか、それとも考え方を理解しているのかという点です。

4.1週間後――他の問題に混ぜて解く

一週間後には、その問題だけを取り出すのではなく、異なる単元や異なる解法の問題に混ぜます。

同じ種類の問題を連続して解くと、どの公式を使うかが最初から分かってしまいます。ところが、実際の入試や模試では、どの解法を使うかは書かれていません。

ローレルらが中学1年生相当の生徒を対象に行った数学学習の研究では、同じ種類の問題をまとめて練習するより、異なる種類の問題を交互に混ぜた方が、後のテスト成績が高くなることが示されました。Rohrer, Dedrick & Stershic, 2015

問題を混ぜることで、「解法を実行する力」だけでなく、「問題を見分けて解法を選ぶ力」が育つのです。

5.2週間後――初見に近い類題を解く

二週間後には、見た目が少し異なる類題に挑戦します。

ここで正解できれば、学んだ考え方が特定の問題を離れ、他の問題にも使える形へ変わり始めています。

反対に、元の問題は解けても類題が解けない場合は、解法の形を覚えているだけで、問題の構造を十分に理解していない可能性があります。

6.1か月後――予告せずに確認する

最後に、一か月後を目安として、総合問題や実力テストの中に入れて確認します。

「今日はこの問題を復習する」と分かった状態ではなく、別の問題の中から必要な考え方を自分で選び出せれば、長期的な定着にかなり近づいています。

その後は、定期テストや模試の前、あるいは一、二か月ごとに短く確認すればよいでしょう。

解けなかったときは、全部の解答をすぐに見ない

復習で解けなかったときに、すぐ模範解答を最初から最後まで読むと、再び「分かったつもり」に戻ってしまいます。

その場合は、ヒントを段階的に使います。

最初は「どの単元の知識を使うか」だけを確認します。それでも進めなければ「解法の方向」を確認し、最後に「最初の一手」だけを見ます。

ヒントを見た後は、もう一度解答を閉じ、残りを自力で完成させます。

また、ヒントを使って解けた問題には「できた」という印ではなく、「ヒントあり」と記録します。ヒントなしで解けて初めて、自力で再生できたと判断します。

何回解けば終了なのか

難問の復習は、単純に「3回解けば終わり」「5回解けば完璧」と決めることはできません。

聡生館では、次の三つを終了の目安とします。

  • 一週間以上の間隔を空けても、白紙から自力で解ける
  • 解法の理由を、式と言葉の両方で説明できる
  • 条件や見た目が変わった類題にも考え方を使える

この三つがそろえば、その問題は「解答を覚えた問題」から「考え方を身に付けた問題」へ変わったと考えられます。

逆に、何回解いても最初の一手が出てこない場合は、回数を増やすだけでは不十分です。その問題の前提となる公式、定理、計算、図形の見方まで戻る必要があります。

難問の復習は、思考の道をつくり直すこと

算数・数学の難問は、一度正解しただけでは身に付きません。

しかし、同じ日に何度も機械的に繰り返せばよいわけでもありません。

大切なのは、

「解答を理解する」
「解答を閉じて思い出す」
「時間を空けて解き直す」
「異なる問題の中から解法を選ぶ」
「類題へ考え方を移す」

という段階を踏むことです。

難問を解き直す目的は、答えを暗記することではありません。問題の条件を読み取り、必要な知識を呼び出し、自分で解法を組み立てるための「思考の道」を脳の中につくることです。

小金井市の学習塾・個別指導塾である聡生館では、正解した問題数だけを学力とは考えていません。一問の難問をどのように研究し、どのような間隔で再び向き合い、どこまで自分の言葉で説明できるようになったかを大切にしています。

一度解けたことは、ゴールではありません。

忘れかけた頃にもう一度考え、自分の力で解法を取り戻す。その積み重ねによって、難問は初めて「自分の学力」へと変わっていくのです。

参考文献

1.Roediger, H. L., & Karpicke, J. D.(2006)Test-Enhanced Learning: Taking Memory Tests Improves Long-Term Retention. Psychological Science, 17, 249–255.
論文情報

2.Karpicke, J. D., & Roediger, H. L.(2008)The Critical Importance of Retrieval for Learning. Science, 319, 966–968.
論文情報

3.Cepeda, N. J., Vul, E., Rohrer, D., Wixted, J. T., & Pashler, H.(2008)Spacing Effects in Learning: A Temporal Ridgeline of Optimal Retention. Psychological Science, 19, 1095–1102.
論文情報

4.Chi, M. T. H., Bassok, M., Lewis, M. W., Reimann, P., & Glaser, R.(1989)Self-Explanations: How Students Study and Use Examples in Learning to Solve Problems. Cognitive Science, 13, 145–182.
論文情報

5.Rohrer, D., Dedrick, R. F., & Stershic, S.(2015)Interleaved Practice Improves Mathematics Learning. Journal of Educational Psychology, 107, 900–908.
論文情報

6.Rasch, B., & Born, J.(2013)About Sleep’s Role in Memory. Physiological Reviews, 93, 681–766.
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