
「何を考えているのか分からないんです」
スプラウツに寄せられるご相談の中で、保護者の方が最も多く口にされる言葉です。
声をかけても返事が返ってこない。
「別に」「分からない」と短く返されるか、黙ってしまう。
以前はもっと話してくれていたはずなのに、いつの間にか会話が減っていった。
その様子を前にして、
「このままで大丈夫なのだろうか」
「何かしてあげられることがあるのではないか」
そう不安になるのは、とても自然なことです。
まず最初に、はっきりとお伝えしたいことがあります。
話してくれない子どもは、心を閉ざしているわけではありません。
そして、何も伝えていないわけでもありません。
子どもの心の声は、言葉になる前から、すでに届いています。
子どもは「話さない」のではなく、「話せない」
大人は、自分の気持ちを言葉で整理することに慣れています。
不安、悲しみ、怒り、戸惑い。
言葉にすることで、自分の状態を理解し、相手に伝えます。
一方で、子どもはそうではありません。
特に心が疲れているとき、追い詰められているときほど、
言葉にする力が先に弱ってしまいます。
うまく説明できない。
どこから話せばいいのか分からない。
話そうとすると、胸が苦しくなる。
その結果として、子どもは「黙る」という選択をします。
それは拒否でも反抗でもなく、
これ以上心が傷つかないようにするための、精一杯の防御なのです。
心の声は、行動や状態として表れている
言葉にならない代わりに、子どもたちは別の形で心の声を出しています。
朝、体が重くて起きられない。
学校の話題になると表情が曇る。
ぼんやりと過ごす時間が増える。
以前好きだったことに関心を示さなくなる。
これらはすべて、
「今は心と身体のエネルギーが足りない」というサインです。
怠けているわけでも、甘えているわけでもありません。
子ども自身が、自分を守ろうとしている状態だと、私たちは考えています。
親ほど、心の声が聴こえにくくなる理由
不思議なことに、いちばん近くにいる親ほど、
子どもの心の声が聴こえにくくなることがあります。
それは、愛情が足りないからではありません。
むしろその逆で、心配する気持ちが強いからです。
「何とかしてあげたい」
「早く元気になってほしい」
「このままでは困るのではないか」
その思いが強いほど、
大人は無意識のうちに「変わること」「動くこと」を期待してしまいます。
しかしその期待が、子どもにとっては
「応えなければならない圧」
として伝わってしまうこともあります。
「聴く」とは、質問することではない
「子どもの話をよく聴きましょう」
そう言われることは多いですが、
ここで言う「聴く」とは、質問を重ねることではありません。
「どうして?」
「何があったの?」
「ちゃんと教えて」
心が疲れているときの子どもにとって、
これらの言葉は負担になることがあります。
本当の意味での「聴く」とは、
今は言葉が出てこない状態を、そのまま受け止めることです。
黙っている時間も、
何も起きていないように見える時間も、
「今は、そういう時期なんだ」と大人が理解すること。
それだけで、子どもは少し安心します。
スプラウツが大切にしている「待つ」という支援
スプラウツでは、無理に話をさせることはしません。
無理に学校へ戻すことも、学習を急がせることもしません。
けれど、それは放置ではありません。
・同じ場所に、同じ人がいる
・否定されない空気がある
・何もしなくても、ここにいていい時間がある
この「何も起こらない時間」の中で、
子どもの心は少しずつ緩んでいきます。
そしてある日、
ほんの一言、ほんの小さな行動の変化が現れます。
それは突然の変化ではありません。
ずっと前から出続けていた心の声が、ようやく形になっただけなのです。
親ができる、たった一つのこと
子どもの心の声を聞き取るために、
特別な言葉や、正解の関わり方は必要ありません。
親ができることは、ただ一つです。
安心を壊さないこと。
話さなくてもいい。
動けなくてもいい。
今はそういう時期なのだと、大人が理解すること。
それだけで、子どもの心は守られます。
心の声は、言葉になる前に、すでに届いています。
あとは、その声を「なかったこと」にしないこと。
スプラウツは、
その声が安心して形になるまで、
静かに、そばで待ち続ける場所でありたいと考えています。
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by Dr.Kazushige.O
(一般社団法人 自在能力開発研究所/聡生館&Sprouts フリースクール代表)
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