
「先生、この子は勉強に向いていないのでしょうか。」
私たちスプラウツの面談で、保護者の方からよくいただく相談です。
学校の授業についていけない。
宿題に取り組めない。
テストの点数が上がらない。
集中力が続かない。
何度教えても忘れてしまう。
そんな状況が続くと、保護者の方は大きな不安を抱えます。
しかし、30年以上教育に携わってきた私には、一つの確信があります。
それは、
「本当に勉強のできない子どもには、まだ出会ったことがない」
ということです。
私が出会ってきたのは、
勉強ができない子どもではありません。
勉強のやり方が分からない子ども。
学び方を教わらなかった子ども。
そして、
「自分はできない」
と思い込んでしまった子どもたちです。
子どもは怠けているのではない
不登校や発達特性のある子どもたちと関わっていると、しばしば誤解されることがあります。
それは、
「やる気がない」
という見方です。
しかし実際には違います。
本人たちは決して怠けているわけではありません。
むしろ、
できない苦しさ
分からない苦しさ
周囲と比べられる苦しさ
失敗する恐怖
と毎日戦っています。
例えば、
文章題を読むだけで疲れてしまう子どもがいます。
計算以前に文章の意味が理解できない子どももいます。
発達障害や学習障害の傾向がある場合には、脳の情報処理に時間がかかることもあります。
周囲から見れば簡単な問題でも、その子にとっては非常に大きな負荷になっていることがあります。
「全部分からない」と言った小学5年生
以前、ある小学5年生の男の子がいました。
算数の問題を前にして、鉛筆がまったく動きません。
私は聞きました。
「どこが分からない?」
するとその子は小さな声で言いました。
「全部。」
私はその言葉が今でも忘れられません。
よく見てみると、その子は算数ができないのではありませんでした。
問題文が読めていなかったのです。
文章の意味が理解できていなかったのです。
つまり、算数以前の段階でつまずいていました。
そこで私は指導方法を変えました。
問題演習を減らし、音読を中心にしたのです。
一緒に読む。
意味を確認する。
言葉を整理する。
その作業を半年近く続けました。
するとある日、
「先生、この問題、前にやったのと似てる。」
と言ったのです。
初めて自分で考え始めた瞬間でした。
学力の低い子どもほど個別支援が必要
私は長年の経験から、
学力の低い子どもほど個別指導が必要
だと考えています。
なぜなら、
つまずく場所が一人ひとり違うからです。
計算で止まる子。
読解で止まる子。
集中力で止まる子。
不安で止まる子。
発達特性によって苦手な部分がある子。
同じ学年でも状況は全く違います。
だからこそ、
一人ひとりを観察し、
どこから学び直すべきかを見極めることが重要になります。
教師はペースメーカーである
私は教育をマラソンに例えることがあります。
初心者に向かって、
「頑張れ」
と言っても走れません。
必要なのはペースメーカーです。
その人に合った速度で、一緒に走る人です。
学習も同じです。
勉強が苦手な子どもに必要なのは、
叱責ではありません。
比較でもありません。
伴走者です。
一緒に考えてくれる人。
一緒に読んでくれる人。
一緒に悩んでくれる人。
そして、
少しずつ前へ進む手助けをしてくれる人です。
AI時代だからこそ必要になる人間の教師
近年、AIの進化は目覚ましいものがあります。
問題を解けば答えが出る。
解説もしてくれる。
作文も書いてくれる。
しかし、
AIにはできないことがあります。
それは、
子どもの表情を見ることです。
不安そうな顔。
自信を失った目。
小さな成功を喜ぶ笑顔。
そこから何に困っているのかを読み取ることです。
教育とは情報を伝える仕事ではありません。
教育とは、
人と人との関わりの中で行われる営みです。
だからこそ、
AI時代になっても教師の役割はなくならないのです。
スプラウツが大切にしていること
スプラウツでは、
不登校支援や発達支援だけではなく、
子どもたち一人ひとりの学習支援を大切にしています。
学力を伸ばすことも大切です。
しかし、それ以上に大切なのは、
子ども自身が
「できるかもしれない」
と思えることです。
自信を取り戻すことです。
学ぶ楽しさを思い出すことです。
そのために私たちは、
子どもたちの現在地を見極め、
その子に合った学習設計を行っています。
おわりに
私は長年の教育経験を通して、
子どもの可能性は大人が思っている以上に大きいと感じています。
今できないことは、その子の限界ではありません。
今つまずいていることは、その子の未来を決めるものではありません。
大切なのは、
適切な支援と伴走者に出会うことです。
学力の低い子どもほど、優秀な教師が必要です。
そして私たちは、
その伴走者でありたいと思っています。
一人で悩まなくて大丈夫です。
子どもたちの未来には、まだたくさんの可能性が残されています。
🌱
by Kazushige.O
(一般社団法人 自在能力開発研究所/Sprouts フリースクール代表)
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