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2026/06/08
スプラウツ
「就学前療育」から「学習参加支援」へ ――小学校入学に向けて育てたい“学びに向かう力”

未就学期の療育と、小学校入学を目前にした療育では、支援の質が少しずつ変わっていきます。

もちろん、子どもによって発達の歩み方は違います。言葉の発達がゆっくりな子、集団の中に入ることが苦手な子、気持ちの切り替えに時間がかかる子、手先の不器用さがある子、感覚の過敏さから活動に入りにくい子など、一人ひとりの課題は異なります。

しかし、就学が近づいてくると、多くの子どもたちに共通して必要になってくる力があります。

それは、**「学習に参加する力」**です。

小学校に入ると、子どもの生活の中に「学習」という大きな要素が入ってきます。保育園や幼稚園、未就学期の療育では、遊びや生活、対人関係を通して発達を促すことが中心になります。しかし小学校では、決まった時間に教室に入り、席に座り、先生の話を聞き、指示を理解し、課題に取り組むことが求められます。

つまり、就学前の療育は、ただ「小学校に行く準備」をするだけではありません。
子どもが小学校という新しい環境の中で、無理なく学びに向かっていけるようにするための、いわば**“学習へのテイクオフ”を支える療育**へと変わっていくのです。

文部科学省は、特別支援教育について、子ども一人ひとりの教育的ニーズを把握し、生活や学習上の困難を改善または克服するために、適切な指導と必要な支援を行うものと説明しています。ここで重要なのは、「生活上の困難」だけでなく、「学習上の困難」も支援の対象に含まれていることです。就学を前にした療育では、まさにこの「学習上の困難」を予防し、子どもが学びに参加できる状態を整えることが大切になります。

では、「学習に参加する力」とは、具体的にどのような力なのでしょうか。

それは、ひらがなが読めることや、数字が書けることだけではありません。もちろん、文字や数への興味を育てることも大切です。しかし、それ以前に必要になる土台があります。

たとえば、決まった時間に椅子に座る力。
先生や大人の話に注意を向ける力。
「これをやりましょう」という指示を聞き取り、行動に移す力。
順番を待つ力。
自分の気持ちを少しずつ調整する力。
わからない時に助けを求める力。
課題が終わるまで、短い時間でも取り組み続ける力。

これらはすべて、学習以前に必要となる**“学びに向かう力”**です。

小学校で困りやすい子どもの中には、勉強そのものができないのではなく、学習に入る前の段階でつまずいている子が少なくありません。席に座っていられない。先生の話を聞き続けることが難しい。何をすればよいのか分からない。周囲の音や刺激に気を取られてしまう。気持ちが切り替わらず、活動に入れない。こうした状態が続くと、本人は「できない子」と見られやすくなります。

しかし、本当は「できない」のではなく、学習に参加するための準備がまだ十分に整っていない場合があります。

ここを丁寧に見立てることが、就学前から就学期にかけての療育では非常に重要です。

実際、就学前の発達障害児に対する「授業参加」支援プログラムの研究では、模擬授業場面を設定し、指示理解や姿勢保持など、授業に参加するための行動を支援した結果、授業関連行動や発言が増え、離席や授業から外れる行動が減少したことが報告されています。これは、就学前から「授業に参加するための行動」を段階的に育てることの意義を示しているといえます。

スプラウツで大切にしているのも、この視点です。

私たちは、子どもにいきなり「勉強しなさい」と求めるのではなく、その子が学習に向かうためには、今どの土台が必要なのかを見ていきます。

たとえば、着席が難しい子には、最初から長時間座ることを求めません。まずは短い時間から始めます。椅子に座る時間を少しずつ伸ばし、「座れた」「取り組めた」という経験を積み重ねます。

先生の話を聞くことが苦手な子には、言葉だけで伝えるのではなく、視覚的な手がかりを使います。絵カード、予定表、短い指示、実物提示などを組み合わせながら、「今、何をすればよいのか」が分かるように支援します。

課題に取り組むことが苦手な子には、量を調整します。最初からたくさんのプリントを出すのではなく、「ここまでできれば終わり」という見通しを持たせます。終わりが見えることで、子どもは安心して取り組みやすくなります。

気持ちの切り替えが苦手な子には、活動の順番を見える形にします。「遊び」から「学習」へ、「休憩」から「課題」へと移る時に、突然切り替えを求めるのではなく、予告やルーティンを使って心の準備を作ります。

このような支援は、一見すると小さなことのように見えるかもしれません。しかし、この小さな積み重ねこそが、小学校での学習参加につながっていきます。

小学校生活では、子どもは多くの「見えないルール」に出会います。

チャイムが鳴ったら席に着く。
先生が話している時は前を見る。
自分の順番まで待つ。
分からない時は手を挙げる。
終わったら静かに待つ。
友だちの発表を聞く。
決められた時間内に課題を進める。

大人にとっては当たり前に見えることでも、発達に特性のある子どもにとっては、とても大きな負担になることがあります。だからこそ、就学前から少しずつ練習しておくことが大切です。

ただし、ここで注意したいのは、就学準備を「早くから勉強を詰め込むこと」と考えないことです。

小学校入学前に、無理に読み書きや計算を先取りする必要はありません。もちろん、子どもが興味を持っている場合には、文字や数に触れることは良い経験になります。しかし、本当に大切なのは、学習内容を先取りすることではなく、学習に向かう姿勢を育てることです。

「聞く」「見る」「まねる」「待つ」「取り組む」「終える」「助けを求める」。
このような基本的な力が整ってくると、子どもは小学校に入ってからの学びに参加しやすくなります。

文部科学省も、幼児教育と小学校教育の接続について、幼児期の育ちと小学校以降の学びを連続したものとして捉えることの重要性を示しています。就学は、子どもの生活が突然切り替わる瞬間ではなく、それまでの育ちを次の学びへつなげていく大切な移行期です。

だからこそ、就学前療育から学習参加支援への移行は、非常に重要な意味を持ちます。

未就学期には、安心できる環境の中で、人と関わる力、遊びを広げる力、生活リズムを整える力を育てます。そして就学が近づくにつれて、そこに「学習へ向かう力」を少しずつ加えていきます。

これは、子どもに負荷をかけるためではありません。
むしろ、子どもが小学校で過度な不安や混乱を抱えないようにするためです。

小学校に入ってから、急に「座りなさい」「聞きなさい」「書きなさい」「待ちなさい」と求められると、子どもによっては大きなストレスになります。その結果、離席が増えたり、かんしゃくが出たり、学習そのものを嫌がったりすることがあります。

しかし、就学前から少しずつ経験を積んでいれば、子どもは「知っている」「やったことがある」「できたことがある」という安心感を持って小学校生活に入ることができます。

この安心感こそ、学びの出発点です。

スプラウツでは、子ども一人ひとりの発達段階を見ながら、無理のない形で学習参加の準備を進めていきます。大切にしているのは、「できないことを叱る」のではなく、「できる形に環境を整える」ことです。

座れない子には、座れる時間と場面を作る。
聞けない子には、聞きやすい伝え方を工夫する。
取り組めない子には、取り組める量と順番を考える。
不安が強い子には、見通しと安心を与える。
集団が苦手な子には、まず大人との一対一の関係から始める。

その子に合った入口を見つけることで、学びへの道は少しずつ開かれていきます。

就学前療育から学習参加支援へ。

この変化は、子どもにとって大きな成長のステップです。
そして保護者にとっても、「小学校に入って大丈夫だろうか」という不安を少しずつ安心に変えていく大切な時期です。

小学校入学はゴールではありません。
子どもがこれから長く続く学びの世界へ入っていく、最初のテイクオフです。

そのテイクオフを、焦らず、急がせず、しかし確実に支えること。
それが、就学を見据えた療育に求められる大切な役割です。

スプラウツでは、未就学期から就学期にかけて、子どもたちが安心して学びに向かえるよう、一人ひとりの発達に合わせた支援を行っています。

「座ることが苦手」
「先生の話を聞くことが難しい」
「集団の中で行動することに不安がある」
「小学校入学に向けて、どのような準備をすればよいか分からない」

そのような不安がある場合は、早い段階から相談することで、できる準備があります。

子どもの成長には、それぞれのペースがあります。
大切なのは、周囲と比べることではありません。
その子が、自分の力で学びに向かっていけるように、必要な土台を一つずつ育てていくことです。

スプラウツは、その子らしい学びのテイクオフを支えていきます。


🌱
by Dr.Kazushige.O
(一般社団法人 自在能力開発研究所  代表理事

 聡生館/Sprouts フリースクール代表)

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