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2025/11/15
スプラウツ
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思考が組み立つ子・組み立たない子 ――算数の“つまずき”はどこから生まれるのか

スプラウツの教室には、さまざまな背景を持つ子どもたちが訪れます。
学校に行きづらくなった子、学びに自信をなくした子、ゆっくり自分のペースで学び直している子。
そんな子どもたちの姿を日々見ていると、同じ教え方をしても「すっと理解する子」と「どう考えればいいのかわからなくなる子」がいることに気づきます。

特に算数の学習では、この差が大きく表れます。
簡単な計算であっても、ある子はすぐに理解する一方で、ある子は途中で混乱してしまい、思考の流れが止まってしまう。そして、そこでつまずいた経験が積み重なると、「自分は勉強ができない」という苦しい思い込みにつながってしまうこともあります。

しかし、私たちははっきりとお伝えしたいのです。
算数の「理解できる/できない」は、生まれつきの才能とはほとんど関係がありません。

その違いは、脳の発達段階や“思考の組み立て方”の差によって生まれるものです。
そして、それらはどれも後から身につけていくことができます。

本記事では、算数のつまずきの背景にある「思考の組み立て」の問題と、その改善方法について、スプラウツでの実践も交えながらわかりやすく解説します。


■1.なぜ同じ説明を聞いても理解の差が出るのか?

例えば「繰り下がりの引き算」。
この単元は、多くの子どもがつまずくポイントです。

「さくらんぼ計算」や「10のまとまりを使った考え方」は、よく使われる方法ですが、すぐに理解できる子もいれば、まったく意味がつかめない子もいます。

ここで大切なのは、
理解の差は“知能の差”ではない
ということです。

子どもによって脳の使い方が異なり、同時処理の得意・不得意、構造をつかむ力の差があるために、結果として理解度に差が出ているだけなのです。


■2.算数の理解を左右する「ワーキングメモリ」

算数の理解を大きく左右するもののひとつが、
**ワーキングメモリ(作業記憶)**という脳の機能です。

ワーキングメモリは、頭の中で“同時に複数の情報を扱うための作業スペース”のようなものです。
計算をするとき、子どもは次のような作業を同時に行っています。

  • 元の数字を記憶しておく

  • 繰り下がりの操作を思い出す

  • 借りてきた数字を把握する

  • 答えに向かう手順を保持する

  • 一連の流れが正しいか確認する

ワーキングメモリが十分でない場合、この同時処理が負担となり、処理の途中で情報がこぼれてしまいます。
結果として「どこを考えているのかわからない」という状態になるのです。

特に、不登校や心的ストレスのある子どもたちは、精神的な負荷がワーキングメモリの働きにも影響することが知られています。
一時的にこの能力が低下してしまうことも珍しくありません。


■3.「構造化」の力が理解の核心

算数においてもうひとつ重要なのは、
構造化(チャンク化) と呼ばれる力です。

理解できる子は、数字の並びや計算のルールを「意味のあるまとまり」として理解しています。

例えば、

  • 「10をつくる」

  • 「数を分ける」

  • 「元の数に戻す」

という一連の動作を“ひとつの構造”として捉えることができています。

一方で、理解が難しい子は、数字をただの「点」として見ています。
全体の流れではなく、“個々の数字や手順”にばかり意識が向いてしまうため、途中で迷子になってしまうのです。

構造化は練習によって身についていく力であり、生まれつきの能力ではありません。
子どもの経験量や、周囲の大人がどのように教えるかによって育まれていきます。


■4.「数量感覚」の不足もつまずきにつながる

数量感覚とは、「数そのもののイメージ」をつかむ力です。

10というまとまりがどれくらいの大きさなのか、
5と7の差はどのくらいなのか、
「借りる」「分ける」が何を意味しているのか。

数量感覚が弱いと、さくらんぼ計算のような“10を基準にした考え方”が理解しにくくなります。

逆に、この感覚が育っている子は、文章題でも式でもスムーズに理解できるようになります。

数量感覚もまた、日々の遊びや体験から育つ力です。


■5.改善の鍵は「思考の見える化」

では、理解が難しい子はどうすればよいのでしょうか。

スプラウツでは、次の3つを中心に取り組んでいます。


●① 図や具体物を使って“思考の見える化”

頭の中だけで数字を動かそうとすると、ワーキングメモリに大きな負荷がかかってしまいます。

そこで、

  • ブロック

  • カード

  • 手の動き

などを活用し、数字の動きや関係を“見える形”にします。

視覚化は、思考の負担を大きく軽減します。


●② 手順を細かく区切る

「いっぺんに全部理解しようとする」のは、大人でも大変です。

そこで、

  1. 数字を分ける

  2. 10を作る

  3. 残りを考える

  4. 最後にまとめる

というように、手順を細かく区切ることで負担が減り、理解が進みやすくなります。


●③ 自分の言葉で説明してもらう

思考を言葉にすることは、理解を深める上でとても重要です。

私たちは子どもに
「どうしてそう思ったの?」
「ここからどうしたらいい?」
と問いかけ、思考を言語化してもらう時間を大切にしています。

言語化は思考の流れを整理し、構造化を助けます。


■6.不登校の子にこそ必要な「思考の組み立て直し」

不登校や長い間学びを離れていた子たちは、
「自分はできない」という思い込みを抱えていることがあります。

しかし実際には、
“できない”のではなく、“脳の使い方を忘れているだけ”
というケースが多いのです。

安心できる環境で小さな成功体験を積むことで、
子どもたちは驚くほど思考の柔軟性を取り戻します。

算数の理解は、その回復の第一歩としてとても適しています。
数字や図は感情的負荷が少なく、小さな成功を実感しやすいからです。

私たちはそうした子どもたちが、もう一度
「自分でもできる」
と感じられるように寄り添い続けます。


■7.まとめ

算数のつまずきは、
「才能」や「努力不足」の問題ではありません。

  • ワーキングメモリ

  • 構造化

  • 数量感覚

  • 心の状態

これらが複雑に関係しながら理解を支えています。

そしてそのすべては、
後から育てていける力です。

子どもたちは、安心できる環境で、
良い経験を少しずつ積み重ねていけば、
必ず思考を取り戻し、前に進むことができます。

スプラウツは、
子どもたちの「できるかもしれない」を支え続ける場所でありたいと考えています。


  by  Dr. Kazushige.O

 スプラウツ代表

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