なぜ学力の差は埋まりにくいのか ― 脳の発達から考える学びの限界 ―|小金井市の学習塾なら個別指導学習塾「聡生館」&学習支援・フリースクールの「スプラウツ」

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2025/12/17
スプラウツ
なぜ学力の差は埋まりにくいのか ― 脳の発達から考える学びの限界 ―

はじめに

「勉強をがんばっているのに、なかなか成果が出ない」
「学年の内容についていけず、本人も自信を失っている」

スプラウツの活動を通して、こうした悩みを抱えるご家庭とお話しする機会は少なくありません。
特に不登校や学習につまずきを感じているお子さんの場合、「努力の問題なのではないか」「やり方を変えれば何とかなるのではないか」と考え、悩み続けてしまう保護者の方も多いのではないでしょうか。

しかし、長年子どもたちと関わる中で、はっきりしてきたことがあります。
学力の差は、努力や意欲だけで説明できるものではない、ということです。

本記事では、学力の差がなぜ埋まりにくいのかを、脳の発達という視点から整理してみたいと思います。


学力は一つの能力ではない

「学力がある」「勉強ができる」と言うと、私たちはつい一つの能力のように考えてしまいがちです。しかし実際には、学力とは複数の脳機能が組み合わさって発揮されるものです。

例えば学習の場面では、
・必要な情報を一時的に頭の中に保つ力
・考えを整理し、操作する力
・抽象的な内容をイメージとして理解する力
・注意を持続させる力

などが同時に働いています。
これらのどれか一つが弱い場合、学習全体がつまずきやすくなります。


ワーキングメモリという見えない要因

学習と深く関わる脳の働きの一つに、ワーキングメモリがあります。
これは「考えるために必要な情報を一時的に頭の中に置いておく力」と表現されます。

数学の問題を解くとき、子どもは問題文の条件を覚えながら、式を立て、計算を進めます。
ワーキングメモリの容量が小さい場合、途中で情報が抜け落ち、「さっきまで分かっていたのに、急に分からなくなった」という状態が起こります。

これは集中力ややる気の問題ではなく、脳の特性によるものです。


処理速度の個人差

もう一つ重要なのが、処理速度の違いです。
処理速度とは、情報を理解し反応するまでの速さのことです。

処理速度がゆっくりな子どもは、理解に時間が必要です。
しかし学校の授業は一定のスピードで進むため、理解が追いつく前に次の内容に進んでしまうことがあります。

その結果、「ついていけない」「分からない」という感覚が積み重なり、学習そのものへの苦手意識につながっていきます。


抽象化が難しい脳の特性

数学が苦手な子どもに多く見られるのが、抽象化の難しさです。
数式は現実の出来事を抽象化した記号ですが、これを自然に扱える子もいれば、最後まで意味をつかめない子もいます。

具体的な体験と結びつけて考えられない場合、数式は「意味の分からない記号」に見えてしまいます。
この状態で理解を求められることは、学習に大きな負担を与えます。


脳の発達には個人差と限界がある

脳は成長しますが、そのスピードや到達点は一人ひとり異なります。
すべての子どもが同じペースで、同じレベルまで伸びるわけではありません。

「努力すれば必ず追いつく」という言葉は希望を与える一方で、現実にはどうしても埋まりにくい差が存在します。
この事実を無視したまま学習を続けると、子どもの心と脳は疲弊してしまいます。


無理な学習が生む学習性無力感

理解できない状態で学習を続け、失敗体験や比較が重なると、子どもは次第に「どうせやってもできない」と感じるようになります。
これが学習性無力感です。

この状態になると、能力以前に「やろうとする力」そのものが失われてしまいます。


学力の限界を知るということ

学力の限界を認めることは、子どもを諦めることではありません。
無理な競争や合わない物差しから一度離れ、その子に合った学び方や成長の道を考えるための出発点です。

学力以外にも、
・丁寧に作業を続ける力
・人と関わる力
・感覚的に物事を捉える力

など、社会で生きるうえで大切な力はたくさんあります。


おわりに

学力の差が埋まりにくい背景には、脳の発達という視点から見た現実があります。
それは努力不足ではなく、特性の違いによるものです。

教育の役割は、すべての子どもを同じ場所へ連れていくことではありません。
その子が、その子らしく社会とつながっていくための土台を整えることだと、私たちは考えています。


🌱
by Dr.Kazushige.O
(一般社団法人 自在能力開発研究所 代表理事

 聡生館/Sprouts フリースクール代表)

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