
― 心の負荷を軽くする科学的アプローチ ―
「うちの子は、どうして不安が強いのでしょうか」
「学校へ行くときになると息が苦しくなるようです」
「理由は分からないけれど“心がザワザワする”と言います」
スプラウツに相談に来られる保護者の多くが、同じような悩みを抱えています。
しかし、不安は性格の弱さでも、甘えでもありません。
脳が“身を守ろう”とする、とても自然な反応なのです。
今日は不安の正体を「脳の仕組み」からひもとき、
スプラウツがどのように子どもの心の負荷を軽くしているかを
科学的にお伝えします。
■ 1. 不安は「危険センサー」である
人間の脳には、外の世界からの情報を“安全か危険か”に分ける仕組みがあります。
その中心にあるのが 扁桃体(へんとうたい) です。
扁桃体は、ほんの少しでも「危ないかも?」と感じた瞬間に反応します。
しかも、たった1〜2秒で全身に指令を出すほど敏感です。
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心臓がドキドキする
-
手足が冷たくなる
-
呼吸が浅くなる
-
頭が真っ白になって判断できない
これはすべて、扁桃体が「危険が近いぞ!」と体を守ろうとする反応。
つまり 不安とは“危険を事前に察知するための大切な機能” なのです。
決して「弱い」からではありません。
■ 2. 現代の子どもは“過剰に不安を感じやすい”
本来、不安は命を守るための反応です。
しかし現代の子どもたちは、この扁桃体が必要以上に反応しやすい環境にいます。
● 情報量が多すぎる
SNS、動画、ゲーム、周囲の会話……
脳に入ってくる刺激は、10年前とは比べものになりません。
常に何かと比較され、評価される環境では、
扁桃体が「自分は大丈夫だろうか?」と働き続けてしまいます。
● 休息が圧倒的に不足
脳が安心を回復するには“安全だと感じる時間”が必要ですが、
今の子どもは学校・塾・宿題・習い事で休む時間がない。
休めない脳は扁桃体のブレーキが効かなくなります。
● 大人の想像以上に“未来”に不安を持っている
中学生・高校生になるほど、
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友達関係
-
成績
-
将来
-
家庭の空気
など、見えない不安に敏感になります。
これらが積み重なると、脳は“常に危険を探すモード”になります。
■ 3. 不登校・行き渋りの背景にも「脳の反応」がある
スプラウツに来る子どもたちの多くは、
「行きたいけれど、行く途中で苦しくなる」と言います。
これは 意志の弱さではなく、脳の仕組みです。
● 扁桃体が危険を感じる
学校=苦しい場所
という記憶があると、扁桃体が敏感に反応します。
● 自律神経が乱れる
心臓が早くなり、呼吸が浅くなり、体は“戦うか逃げるか”のモードに入ります。
● 前頭前皮質(思考・判断の脳)が働かない
「大丈夫」「行ける」という冷静な判断ができなくなるので、
本人はどうにもできないのです。
つまり、
不登校は“脳の緊急ブレーキ”が働いた状態でもあります。
■ 4. スプラウツが大切にしている「脳が安心を取り戻すプロセス」
不安を軽くするためには、
無理に「行け」「頑張れ」と押すのではなく、
脳の安全センサー(扁桃体)が落ち着く環境を作ることが必要です。
スプラウツで実践しているのは、次の3つです。
● ① “安全基地”づくり
脳は「安全な場所」にいるときにだけ、回復を始めます。
スプラウツの穏やかな雰囲気・少人数空間・丁寧な対話は、
扁桃体を落ち着かせるために欠かせません。
「ここなら大丈夫」
「話さなくてもいい」
「評価されない」
この感覚が不安の改善の第一歩です。
● ② 子どものペースで“成功体験”を積み直す
不安は「自信の不足」と密接につながっています。
スプラウツでは、
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工作
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科学実験
-
ゲーム
-
個別学習
など、小さくても“できた”を一つずつ積み重ねます。
成功体験は脳内の報酬系を刺激し、
扁桃体の反応を和らげ、
「やってみよう」という意欲を作ります。
● ③ 呼吸・体感覚を整えるオリジナルメソッド
扁桃体の暴走は、呼吸や体の感覚を整えることで落ち着きます。
スプラウツでは
-
ゆっくり呼吸する練習
-
体幹バランス
-
筋弛緩法の簡易版
などを子ども向けにアレンジして行っています。
これはHRV(心拍変動)にも関係し、
自律神経のバランスを整える科学的アプローチです。
■ 5. 不安は「脳が壊れたサイン」ではない
不安が強い子どもを見ると、保護者は心配になります。
しかし、不安は「壊れた状態」ではありません。
むしろ
脳が必死に子どもを守ろうとしている証拠
です。
だからこそ、責める必要も、焦る必要もありません。
回復には“安心”と“時間”が必要ですが、
脳は本来、柔軟で回復力に満ちています。
スプラウツに通う多くの子が、
半年、一年と経つうちに
表情が明るくなり、心の負荷が軽くなり、
ゆっくりと前に進んでいくのはそのためです。
■ 6. 「不安を理解する」ことが、回復のスタートライン
子ども自身も、保護者も、
“不安とは何か”を理解することで
心の負荷は大きく軽くなります。
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不安は悪者ではない
-
脳が身を守るために起きている
-
だから安心できる環境が必要
-
時間をかければ、脳は必ず回復する
この理解が、子どもの未来を変えていきます。
スプラウツはその“安全基地”として、
これからも一人ひとりの心に寄り添いながら、
脳科学に基づいた支援を続けていきます。
🌱
by Dr.Kazushige.O
(一般社団法人 自在能力開発研究所/Sprouts フリースクール代表)
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