
学力・人間力向上のためのブログ
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2025/10/31
記憶は“つながり”で強くなる ― 脳が覚えるメカニズムと“思い出す力”の育て方 ―
「昨日覚えたはずなのに、テストになると出てこない」
――そんな経験、誰にでもありますよね。
実は、それは記憶力が悪いからではありません。
脳の“つながり”が弱いだけなのです。
■ 「覚える」よりも「思い出す」練習を
多くの生徒が勉強でやりがちなのは、
「何度も読む」「繰り返し見る」という“入力中心”の学習です。
ところが、脳科学的に見ると、記憶は入力よりも出力で強化されることが分かっています。
たとえば、ノートを見ながら覚えるのではなく、
何も見ずに“思い出す”練習をした方が、記憶は長期的に定着します。
これを心理学では「想起練習(retrieval practice)」と呼びます。
つまり、
覚えるとは“脳に入れる”ことではなく、“脳の中から引き出す回路を作る”ことなのです。
■ “つながり”こそが記憶を支える
人の脳は、単独の情報よりも「つながった情報」をよく覚えます。
たとえば、歴史の年号だけを覚えるのは苦痛ですが、
その背景や人物の関係、時代の流れと一緒に学ぶと、自然に記憶が残ります。
これは、脳の神経細胞(ニューロン)が“ネットワーク”として働いているからです。
つまり、新しい知識は既存の知識との“結びつき”によって記憶される。
聡生館の授業では、単なる暗記ではなく、
「それは何と関係しているか」「どんな意味の流れがあるか」という“関連づけ”を重視しています。
たとえば、英単語を覚えるときにも、
単語単体ではなく、文章・場面・感情と結びつけて学びます。
「connect=つなぐ」という言葉を、友だちとの会話やネットのつながりに結びつける。
そうすることで、脳の中に“意味のネットワーク”ができるのです。
■ 記憶を“線”でなく“面”にする
学びが深まるとは、知識が点でなく“面”になっていくことです。
つまり、知識同士が結びつき、体系を作っていく。
聡生館では、科目を超えて“思考のつながり”を意識させます。
たとえば、
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数学の「関数」は、社会の「変化の分析」とつながる。
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英語の「文法構造」は、論理的思考の訓練になる。
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歴史の「因果関係」は、現代社会の理解に応用できる。
このように、知識を「バラバラに覚える」のではなく、「構造として理解する」。
これが“記憶の深さ”をつくる鍵です。
■ 「五感」で記憶を支える
脳科学の研究では、記憶は“感情”や“五感”と結びついたときに強く残ることが分かっています。
たとえば、ある香りや音楽を聞くと、そのときの情景がよみがえることがあります。
これは、海馬(記憶を司る部分)と扁桃体(感情を司る部分)が密接につながっているからです。
勉強でも、
・「声に出して読む」
・「色ペンで分類する」
・「図で整理する」
といった“感覚を使った学習”を取り入れると、記憶の定着率は格段に上がります。
聡生館では、視覚・聴覚・言語を組み合わせた「多感覚学習」を導入し、
生徒一人ひとりの記憶タイプに合わせた指導を行っています。
■ 忘れるのは“悪いこと”ではない
実は、「忘れる」という現象も、脳にとっては重要な働きです。
必要のない情報を整理し、必要な情報を強く残す――
それが、記憶の効率を高める仕組みです。
心理学者エビングハウスの「忘却曲線」によると、
人は学んだ内容の7割を1日で忘れるといいます。
しかし、これは“復習のタイミング”を教えてくれるサインでもあります。
聡生館では、生徒の学習スケジュールをAI分析で最適化し、
「忘れる前に再び思い出す」――そのリズムで学びを設計しています。
忘れる前に思い出す。それが最も効率の良い記憶法なのです。
■ 記憶の“整理力”が思考を深める
本当に力のある学びとは、たくさん覚えることではなく、
覚えた知識を整理し、必要なときに取り出せる力です。
それはちょうど、図書館の本棚のようなもの。
本が多くても、分類がバラバラなら探し出せません。
しかし、きちんと整理されていれば、必要な知識をすぐに引き出せます。
この“整理する力”が「思考力」とつながります。
つまり、記憶と理解は別物ではなく、同じ根を持っているのです。
聡生館では、ノートの取り方や復習法にも、
「知識を再構築する思考整理法」を取り入れています。
■ 結びに ― “覚える”から“つながる”へ
私たちは、子どものころから「覚えること」を学んできました。
でも、これからの時代に必要なのは「つなげる力」です。
情報があふれる社会で、知識をただ蓄えるだけでは意味がありません。
大切なのは、知識をどうつなげ、どう活かすか。
記憶とは、過去を保存するためのものではなく、
未来をつくるための素材なのです。
今日覚えたことを、明日の発見へとつなげていく。
その小さな積み重ねが、あなたの思考を深め、人生を豊かにしていくのです。
🌙
by Dr.Kazushige.O
(一般社団法人 自在能力開発研究所・聡生館 代表)
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