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学力・人間力向上のためのブログ

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  • 2025/10/21

    “問い”から始まる学び ― ソクラテス式に考える力を育てる ―

◆1.“教えられる学び”から、“問いを立てる学び”へ

私たちは学校教育の中で、長い間「教えられる学び」に慣れてきました。
先生が問いを出し、生徒はその答えを探す――。
しかし、これからの時代に求められているのは、
**「自分で問いを立てる力」**です。

AIが膨大な情報を処理し、答えを瞬時に出してくれる時代。
だからこそ、人間にしかできないのは「何を問うか」という創造的思考。
それが、これからの学びの核心になります。

古代ギリシャの哲学者ソクラテスは、
弟子に答えを教えることはしませんでした。
代わりに、問いを投げかけ続けたのです。

「あなたはそれを本当に理解していますか?」
「なぜそう思うのですか?」
「その前提は正しいですか?」

ソクラテスは、“問いによって思考を掘り下げる”方法を用いました。
それは「産婆術(さんばじゅつ)」と呼ばれます。
母親が子どもを取り上げるように、
人は“問い”を通して、自らの中から知を生み出す――
これこそが、考える力の原点なのです。


◆2.「なぜ?」が思考を動かす

聡生館の授業では、どの教科でも「なぜ?」という言葉が頻繁に飛び交います。
たとえば英語であれば、
「なぜこの文は過去形ではなく現在完了形なのか」
数学なら、
「なぜこの式の変形で答えが導けるのか」
世界史であれば、
「なぜその国が戦争に踏み切ったのか」

この“なぜ”を掘り下げる習慣が、思考の深さを決めます。

ある中学生の生徒が、歴史の授業中にこんな質問をしました。
「先生、なぜ日本は明治維新でうまく近代化できたんですか?
 ほかのアジアの国々は植民地になってしまったのに。」

この問いがきっかけで、授業は単なる年号暗記から、
「歴史を構造として理解する時間」に変わりました。
問いが変わると、学びの次元が変わる。
これは、どんな科目にも通じる真理です。


◆3.“良い問い”とは何か

では、“良い問い”とはどんな問いでしょうか。
単に「分からないこと」を聞くことではありません。
“良い問い”には、次の3つの特徴があります。

1️⃣ 前提を疑う問い
 例:「なぜ人は勉強しなければならないのか?」
 → “当然”とされていることをあえて見直す。これが思考を動かす。

2️⃣ 関係を探る問い
 例:「この出来事と、あの出来事にはどんな関係があるのか?」
 → 点を線につなぎ、知識を構造化する。

3️⃣ 自分事として問う
 例:「この考えを自分の生活にどう生かせるか?」
 → 知識を「自分の言葉」に変える瞬間が生まれる。

問いとは、思考のナビゲーションです。
どんな方向に考えを進めるかを決める“座標軸”でもあります。


◆4.“ソクラテス式”を授業でどう生かすか

聡生館の指導では、ただ教えるだけでなく、
「問いかけ」を通して生徒が考える時間を必ず設けます。

たとえば、国語の授業。
「作者がこの表現を選んだ理由は何だろう?」
「この登場人物の行動を、あなたならどう考える?」
といった問いを投げかけると、生徒の思考が動き出します。

英語では「なぜこの語順になるのか」を自分で説明できるように。
数学では「なぜその定理を使うのか」を自分の言葉で語れるように。

このように、自分の思考を“言語化”できる生徒ほど伸びるのです。
なぜなら、言語化は思考の外化=自分の頭の中を整理する行為だからです。


◆5.「答えを知る」より「問いを持つ」受験勉強へ

大学受験も同じです。
合格を勝ち取る生徒は、単に問題を解くのではなく、
「なぜこの問題が出されるのか」を考えています。

出題者の意図を読み取る――これは“逆ソクラテス式”ともいえます。
たとえば英語の長文問題であれば、
「この設問は、どんな論理構造を理解してほしいのか?」
数学であれば、
「この誘導は、どんな定理や考え方を使わせたいのか?」

このように出題者の問いを読み解くことで、
「考える力」は格段にレベルアップします。

受験とは、問いの連続です。
問題集を解くことは、答えを探す訓練であると同時に、
“問いの意図を見抜く”練習でもあるのです。


◆6.問いをもつ生徒は、人生の方向も見える

問いを立てる力は、学びの枠を越えて、
人生そのものをデザインする力になります。

「自分はなぜこの大学を目指すのか?」
「この学部で何を学びたいのか?」
「将来、どんな社会課題に関わりたいのか?」

これらはすべて、“人生のソクラテス的問い”です。
問いを持てる人は、自分の軸を持てる人です。
軸を持てる人は、迷っても戻る場所を知っています。

そして、その第一歩は日々の勉強の中にあります。
「なぜそうなるのか」を考える習慣。
その積み重ねが、やがて人生の設計力へとつながります。


◆7.まとめ:答えよりも、問いの質を磨く

AIが正解を出す時代に、人間が磨くべき力は「問いの質」です。
どんなに情報を知っていても、
「何を問うべきか」が分からなければ、思考は深まりません。

ソクラテスは言いました。

「私は、自分が知らないことを知っている。」

知らないことを自覚するからこそ、問いが生まれる。
問いがあるからこそ、学びが始まる。
そして、その問いが深いほど、思考は豊かに育ちます。

聡生館の教室では、今日も“なぜ?”という声が響いています。
その一つひとつの問いが、生徒たちの未来を形づくる。
それが、“問い”から始まる学びなのです。

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