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学力・人間力向上のためのブログ

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  • 2025/10/07

    🌿 人生の意味を問い、今を生きる ― 子どもの哲学と“メメント・モリ”が学びを変える

はじめに──一見、遠いようで近い二つの視点

子ども番組の主題歌と、古代ローマの哲学「メメント・モリ」。
一見、まったく異なる二つの題材のように思えるかもしれません。しかし、実はこの二つには共通している深いテーマがあります。それは、「人生の意味を問い、今をどう生きるか」という、誰もが避けて通れない根源的な問いです。

アンマンの主題歌には、子どもたちにもわかる形で〈助け合い〉〈挑戦〉〈希望〉〈役割〉といった価値観が歌われています。その背後には、「何のために生きるのか」という問いが静かに横たわっています。
一方で、「メメント・モリ(memento mori)」は、ラテン語で「死を忘れるな」という意味。死という避けられない事実を通して、今この瞬間をどう生きるかを真剣に問いかけます。

本稿では、この二つの視点を結びつけながら、「学びの本当の動機」を考えます。そして、学校や家庭、地域の教育の現場で、子どもたちが自分の人生を主体的に形づくるためのヒントを探っていきます。


1. 子どもの哲学:「何のために生きるのか」を考える

1-1. 子ども番組に潜む深い問い

子ども向け番組の主題歌には、時に大人もはっとするような哲学的なメッセージが込められていることがあります。アンマンの主題歌に繰り返し登場するのは〈助け合い〉〈挑戦〉〈希望〉〈役割〉といったキーワード。
これは単なる楽しい歌詞ではなく、「何のために生きるのか」という問いへの一つの答えでもあります。

たとえば、「誰かを助ける」という行為は、単なる道徳的な行動ではなく、自分が何を大切にしているのかという価値観と深く結びついています。子どもたちは歌を通じて、自分の内面と社会との関わりを自然に感じ取っているのです。


1-2. 問いを避けず、問い続ける

「何のために生きるのか」という問いに、唯一の正解はありません。人それぞれの答えがあり、人生の過程でその答えは変化していきます。重要なのは、この問いを避けず、問い続ける姿勢です。

子ども哲学教育の先駆者であるリップマンは、「問いこそが子どもにとって最初の思考であり、大人がそれを尊重することが教育の出発点である」と述べています(Lipman, 2003)。
子どもたちは、問いを立てる力を本来備えており、それを周囲の大人が受け止め、対話を通して育むことで思考は深まっていきます。


1-3. 学校での実践:小学生から高校生へ

小学校高学年の授業では、この主題歌を題材にしたワークを行うと効果的です。

  • 歌詞の中から「誰かを助ける場面」を選び、感想を書く

  • その場面を学校生活に置き換えてロールプレイする

  • 「自分が大切にしたいこと」を一人一文で発表する

こうした活動は、子どもたちが自分自身の価値観を言葉にする練習になります。

中学生では、「正義とは何か」「個人の幸福と社会の善はどう両立するか」といった抽象的なテーマでディベートや調査学習を行うことができます。高校ではさらに発展し、「職業とは何か」「他者への貢献と自己実現の関係」といったテーマを進路研究や倫理の授業と結びつけ、自己の軸を深めていきます。
苫野一徳(2014)は、こうした問いの積み重ねが「学びの内発的な意味づけ」を生み、子どもたちの学びを支える力になると指摘しています。


2. メメント・モリ:「死を思う」ことで今を生きる

2-1. 「死を忘れるな」という哲学

「メメント・モリ(memento mori)」は、古代ローマに由来する有名な言葉です。人は誰しも死を避けることはできない。この厳然たる事実を心に留めておくことで、日々の生き方を正し、より充実した人生を送ろうという教えです。

ストア派の哲学者セネカは、「人生は短いのではない。私たちが多くを無駄にしているのだ」と述べています(セネカ, 2011)。
この言葉には、時間の有限性を意識し、一日一日をより良く生きるための力強いメッセージが込められています。


2-2. 有限の時間が意欲を生む

「死を思う」というと暗いイメージを持つかもしれません。しかし、その本質は恐怖ではなく、「限られた時間を意識することで、今を大切に生きる」という前向きな姿勢です。

人間の時間は無限ではありません。今日の1時間をダラダラと過ごすか、それとも未来を切り拓くための時間にするか──この小さな選択の積み重ねが、人生を大きく左右します。
スポーツ選手がゴールを見据えて全力を尽くすように、勉強にも「ゴール」があると意欲は格段に高まります。「いつか終わりが来る」という前提に立つと、今という時間の重みがぐっと増すのです。


2-3. 学びと「メメント・モリ」

中高生にとっても、この考え方は非常に有用です。「どうして勉強しなければならないのか」と疑問を持つとき、「人生には限りがある」という視点は強力なモチベーションになります。
限られた時間の中で何を学び、どんな人生を選ぶのかは自分自身の決断です。「死を思え」という言葉は、「今を真剣に生きよ」という励ましでもあるのです。
パスカル(1978)は『パンセ』の中で、人間の有限性と永遠性を対比しながら、「死の自覚が生を深める契機となる」と論じています。


3. 二つの視点の交差点:「生きる意味 × 限られた時間」

「何のために生きるのか」と「時間は有限である」という二つの視点は、実は表裏一体です。
人生の目的を問い続けることで、時間の使い方に意識が向きます。逆に、限られた時間を自覚することで、自分が何を大切にしたいのかが明確になります。

この二つが交わるところに、学びの本質的な動機があります。
勉強は、点数や受験のためだけではなく、自分の人生を形づくり、他者や社会とつながるための力です。子どもたちがこのことに気づいたとき、学びは義務から「自分の未来を切り拓く冒険」へと変わります。


4. 実践の場:家庭・学校・地域で育む哲学

このような問いを育てるには、家庭・学校・地域が連携することが大切です。

家庭では、週に一度「感想カード」を書き合い、歌や番組の感想を食卓でシェアするだけでも十分です。親が子どもに「どうしてそう思ったの?」と問い返すことで、思考を深める時間が生まれます。親自身が価値観や失敗談を語ることも大きな学びになります。

学校では、歌や物語、地域課題を題材にした哲学的対話やディベート、探究学習を組み込むことで、子どもたちが自分の考えを言語化する力を養います。さらに地域の公民館や図書館と連携して公開講座を開くことで、学びの文化が学校の外にも広がります。

実際、ある小学校では「価値観プロジェクト」として、地域の福祉施設を訪問し、歌を一緒に歌ったあとに感想をまとめる活動を行いました。その結果、授業中の発言が増え、学習への主体性が高まったと報告されています。小さな取り組みでも、問いを育てる文化は確実に根づいていきます。


結び──人生を学びで彩る

「アンマンの歌」と「メメント・モリ」。
この二つは、異なる時代・文脈にありながらも、「人生の意味を問い、今を大切に生きる」という一点で重なります。

こうした哲学的な視点を子どもたちと共有することは、テストの点数を上げるための即効薬ではありません。しかし、長い目で見れば、自己効力感や共感力、持続的な学習姿勢といった、人生を支える力を育てる確かな投資です。

あなたは、今日という時間をどのように使いますか?
そして、どんな価値を大切にして生きていきますか?

問いを持ち、今を生きること。
それこそが、学びの出発点なのです。


📚 参考文献

  • セネカ(2011)『人生の短さについて』光文社古典新訳文庫.

  • パスカル(1978)『パンセ』中央公論社.

  • Lipman, M. (2003). Philosophy for Children. Nakanishiya Shuppan.

  • 苫野一徳(2014)『教育の力』講談社現代新書.

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