
不登校や登校しぶりについてご相談を受けていると、多くの保護者の方が同じ言葉を口にされます。
「このままで大丈夫なのでしょうか」
学校へ行けなくなったわが子を前に、不安にならない親はいません。学習の遅れ、将来への影響、社会から取り残されてしまうのではないかという焦り。その気持ちは、とても自然なものだと思います。
近年、教育の現場ではAIの活用が急速に進んでいます。AI教材やオンライン学習、個別最適化されたカリキュラムなど、知識を学ぶ環境は大きく広がりました。「学校に行けなくても、AIで勉強すればいいのではないか」と考える方もいらっしゃるでしょう。
確かに、知識を得るという点において、AIは非常に優れたツールです。しかし、不登校という状態にある子どもたちに、今もっとも必要なものは、本当に「知識」なのでしょうか。
フリースクール・スプラウツでは、不登校を「怠け」や「失敗」とは考えていません。不登校とは、多くの場合、心と身体が限界まで頑張った末に発しているサインです。周囲に合わせようと無理を続け、失敗を重ね、自分を責め続けた結果、動けなくなってしまった状態なのです。
そのようなとき、必要なのは「次にどうするか」「いつ戻るか」といった目標ではありません。まず必要なのは、心と身体のエネルギーを回復させる時間と環境です。
スプラウツが大切にしているのは、face to faceの関わりです。face to faceとは、単に対面で勉強を教えることではありません。表情、声のトーン、沈黙の時間、言葉にならない感情を含めて、その子と同じ空間を共有することです。
不登校の子どもたちは、自分の気持ちをうまく言葉にできないことが少なくありません。「何がつらいのか分からない」「どうして行けないのか説明できない」。そうした状態の中で、無理に言葉を引き出そうとすると、かえって心は閉じてしまいます。
AIは正しい答えを提示することはできますが、子どもの沈黙に寄り添い、「まだ話せない状態なんだな」と受け止めて待つことはできません。人と人との関係性の中でしか生まれない関わりがあります。
スプラウツでは、一見すると「何もしていない」ように見える時間を大切にしています。勉強をしない日もあります。ただ安心して過ごす時間もあります。しかし、その時間こそが、心の回復にとって重要なプロセスなのです。
心が少しずつ緩んでくると、子ども自身の内側から「何かやってみようかな」「少し話してみようかな」という気持ちが芽生えてきます。学びは、心が動いてから始まります。心が閉じたままでは、どれほど優れた教材があっても、学びは入ってきません。
不登校という時間は、決して無駄な時間ではありません。それは、自分の心と向き合い、これまで無理をしてきたことに気づき、自分のペースを取り戻すための大切な時間でもあります。
フリースクール・スプラウツは、学校の代わりでも、子どもを変える場所でもありません。不登校の子どもたちが、安心して立ち止まり、心を回復させ、自分のペースで再び前を向くための居場所です。
AI時代だからこそ、人と人が向き合うface to faceの教育は、これまで以上に大きな意味を持つと私たちは考えています。
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by Dr. Kazushige.O
(一般社団法人 自在能力開発研究所 代表理事/聡生館&Sprouts フリースクール代表)
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