>「どうせ自分なんて……」
そんな言葉を、子どもたちの口から聞くことがあります。
その言葉の裏には、たくさんの失敗の記憶や、誰かに否定された痛みが隠れています。
でも、私は思うのです。
人はどんなときでも、心の奥のどこかに “自分を信じる力” を持っている、と。
自分を信じる力は、誰の中にもある
スプラウツの教室では、子どもたちの表情が少しずつ変わっていく瞬間をよく見ます。
最初は不安そうだった目が、少しずつ前を向き、
笑顔の時間が増えていく。
それは、子どもが「自分でもできる」と感じ始めたサインです。
人は、誰かから認められたときに自信を持つようになりますが、
本当の“自信”は、他人に与えられるものではなく、
「自分で自分を信じられたとき」に芽生えるものです。
その力は目には見えませんが、
確かに心の奥で静かに息づいています。
その芽をどう育てるかが、私たち大人の関わり方にかかっているのです。
「できた」という経験が心を変える
スプラウツでは、子どもが何かをやり遂げたとき、
結果の良し悪しではなく、「できた」という事実を大切にしています。
たとえ小さな成功でも、それは心の栄養になります。
ある生徒は、最初のうちは勉強にまったく手がつきませんでした。
机に向かうのがつらく、プリントを前にしてため息をつく毎日。
でも、スタッフが「今日は最初の一問だけ一緒にやってみよう」と声をかけると、
しぶしぶながらも鉛筆を動かしました。
終わったあとに「できたね」と伝えると、
その子の表情にほんの少し笑みが浮かびました。
そのわずかな瞬間こそが、“自分を信じる力”の芽生えです。
こうした小さな「できた」の積み重ねが、
やがて「自分なら大丈夫かもしれない」という確信へと変わっていくのです。
否定の言葉が心に残すもの
逆に、何かに挑戦して失敗したとき、
周囲から「なんでできないの?」「前にも言ったでしょ」と言われ続けると、
子どもは「どうせ無理」と思い込むようになります。
そうして、自分を信じる心が少しずつ削られていきます。
スプラウツでは、失敗を責めることはしません。
間違えたときこそ、「どうしたらできるかな?」「次はどんな方法がある?」と
一緒に考えます。
失敗を“否定”ではなく、“学び”として受け止めることで、
子どもたちの中に再び「自分への信頼」が戻ってくるのです。
信じてもらう経験が、自分を信じる力になる
子どもは、大人から信じてもらう経験を通して、
初めて自分を信じることを学びます。
「あなたなら大丈夫」
この一言には、何よりも強い力があります。
それは根拠のない励ましのように聞こえるかもしれません。
けれど、信じてくれる人がいるということが、
どれほど大きな支えになるかを、私たちは忘れてはいけません。
スプラウツでは、子どもたちにとって「信じてくれる大人」でありたいと思っています。
信じてもらう体験を重ねることで、
子ども自身の中に「自分を信じる力」が静かに育っていくのです。
自分を信じることは、未来を信じること
“自分を信じる力”とは、
決して「強くなれ」「前を向け」という精神論ではありません。
それは、「自分の可能性を否定しない心」です。
人生には、思うようにいかない時期が必ずあります。
でも、どんなときでも「きっと大丈夫」と思える人は、
心のどこかに自分を信じる根を持っています。
スプラウツの教室で育っていくのは、
まさにその“心の根っこ”です。
風が吹いても折れない、
静かだけれど確かな強さ。
私たちは、子どもたちの中にあるその力を信じ、
その芽がゆっくりと伸びていくのを見守っています。
すべての子どもにある「光」
子どもたちの目の奥には、それぞれの光が宿っています。
それは消えかけているように見えることもあります。
でも、その光は完全に消えることはありません。
周りの大人があたたかく照らしてあげれば、
また静かに灯り始めるのです。
スプラウツは、そんな「心の灯」を守る場所でありたい。
そして、子どもたちが自分自身を信じ、
未来を恐れずに歩いていけるよう、
今日もそっと背中を押しています。
by Dr.Kazushige.O
(一般社団法人 自在能力開発研究所/Sprouts フリースクール代表)
-
聡生館日曜日の過ごし方について2025/05/18 -
スプラウツ今週、月曜日から金曜日まで書いてきたブログ記事内容のチェックリストです。2025/09/06 -
スプラウツシリーズ第1回「安心から始まる学び — スプラウツの第一歩」2025/10/06


