
学力・人間力向上のためのブログ
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2025/10/31
“気づき”を記録するノート術 ― 学びを資産化する ―
ノートは「書くための道具」ではなく、
「考えるための道具」だと、私はいつも生徒たちに話しています。
ノートをとる目的が“板書の写し”で止まっているうちは、
学びはまだ「他人の言葉」のまま。
しかし、自分の“気づき”を言葉にした瞬間から、
そのノートは自分の頭で考えた証拠になります。
■ 「書くこと」は“考えること”
最近では、授業の板書を写真で撮る生徒も多くなりました。
けれど、写真に残しただけでは「記録」であって、「理解」ではありません。
手を動かし、自分の言葉で書きながら整理することで、
脳の中で情報が構造化されていきます。
書くことは、単なる記録作業ではなく、
思考を整理し、言葉を生み出すプロセスなのです。
たとえば、聡生館では「3色ノート法」を取り入れています。
黒は“事実”、青は“自分の理解”、赤は“気づき・発見”。
このように色を使ってノートを分けるだけで、
学びの中に「自分の考え」がどこにあるかが見えてきます。
■ “気づき”を書き残すことが未来の資産になる
学んだ内容は時間とともに忘れていきます。
しかし、“気づき”をノートに書いておくと、
そこにはその時の「考えの痕跡」が残ります。
それは、後から読み返したときに、
単なる復習ではなく“思考の再体験”ができるということです。
つまりノートは、過去の自分との“対話の記録”。
そのページの一つひとつが、自分の成長の地図になるのです。
受験勉強でも、この「気づきノート」を持っている生徒は強いです。
同じ問題集を解いても、
「前はこう考えた」「今回はこう変わった」と記録することで、
知識が線でつながり、理解がどんどん深くなっていきます。
■ 「まとめノート」は目的ではなく手段
多くの生徒が、テスト前に“きれいなまとめノート”を作ります。
しかし、ノートを「美しくまとめる」ことが目的になってしまうと、
学びは止まります。
大事なのは、「まとめる」ことではなく「気づく」こと。
聡生館の授業では、ノート作成の目的をこう定義しています。
「自分の考えを整理し、次の行動につなげるために書く」
つまり、“まとめるノート”ではなく、“育てるノート”。
ノートは完成させるものではなく、
進化させ続けるものなのです。
■ “問いノート”で思考を可視化する
聡生館では、もうひとつ特徴的な取り組みをしています。
それが「問いノート」です。
授業の最後に、「今日の学びから浮かんだ問い」を一つ書く。
「なぜそう言えるのか」「他の考え方はないのか」など、
自分の中で残ったモヤモヤを、あえて言葉にします。
この問いは、次の授業での「出発点」になります。
“わからない”を放置せず、“問い”として記録しておくことで、
思考の連続性が生まれます。
実は、成績が伸びる生徒ほど、ノートの中に“問い”が多い。
それは、考える力が伸びている証拠なのです。
■ ノートが“思考の鏡”になるとき
ノートを開くと、その人の考え方が見えてきます。
情報をただ並べているだけのノートは、思考が平面的。
しかし、気づきや問いが散りばめられているノートは、立体的で深い。
“どんなノートを書くか”は、“どんな学びをしているか”の鏡です。
聡生館では、生徒一人ひとりのノートを「思考の履歴」として見ています。
書かれた言葉の中に、どんな感情が動いていたのか。
どんな理解の変化があったのか。
そこを読み取ることで、その生徒の“思考の成長曲線”が見えてきます。
■ ノートは、学びの「未来地図」
AIが発達した今、情報を得ることは簡単になりました。
しかし、自分の中でそれを“意味づけ”できなければ、
情報は知識にも、知恵にもなりません。
ノートは、自分の思考を可視化し、
時間を超えて再び使える“学びの資産”を作る行為です。
10年前のノートを読み返して、
「このときの自分はこう考えていたんだ」と気づけること。
それこそが、学びの本当の価値ではないでしょうか。
学びを“その場限り”で終わらせず、
“未来へ続くストーリー”として積み重ねていく。
その第一歩が、今日のノート1ページなのです。
■ 結びに ― ノートが「人生を記録する書物」になる日
私は、ノートを「人生の副産物」だと思っています。
そこには、自分が悩んだ証、迷った跡、そして気づいた瞬間が刻まれている。
生徒たちが卒業するとき、私はこう伝えます。
「そのノートは、君の“思考の履歴書”だよ。」
点数や偏差値よりも、そのノートの中にある“自分の言葉”こそが、
未来をつくる原動力になります。
だから、今日の一行を大切に書いてほしい。
その一行が、未来のあなたを導く“答え”になるかもしれません。
🌙
by Dr.Kazushige.O
(一般社団法人 自在能力開発研究所・聡生館 代表)
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