
学力・人間力向上のためのブログ
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2025/10/29
🌱“比較しない”という勇気 ― 自分のペースで生きる力を育てる ―
「どうしてあの子はできるのに、私はできないんだろう」
「友だちはもう進んでいるのに、僕はまだここなんだ」
そんな言葉を、子どもたちの口からよく耳にします。
比べてしまう気持ちは、誰の心の中にもあります。
でも、そこに少しの“勇気”があれば、
人はもっと自分らしく生きられるようになるのです。
🔸 比べることから生まれる“苦しさ”
現代の子どもたちは、常に「比較」の中で生きています。
テストの点数、運動会の順位、友だちとの関係、SNSの“いいね”の数――。
周りの誰かと自分を比べて、安心したり落ち込んだり。
本当は頑張っているのに、「自分はダメだ」と感じてしまうこともあります。
特に、不登校や発達特性をもつ子どもたちは、
「人と違う」という現実を、早い段階で突きつけられることがあります。
でも、“違い”は“劣り”ではありません。
そこに気づくためには、まず比較しない勇気が必要なのです。
🔸 “違い”こそが、個性の始まり
スプラウツでは、子どもたちに「得意」と「苦手」を一緒に探していきます。
「これなら得意だね」「ここはちょっと苦手だけど、工夫すればできそうだね」――
そんな対話を重ねながら、一人ひとりの“自分の軸”を育てていきます。
ある生徒は、勉強が苦手で自信をなくしていました。
けれど、絵を描くことや、パソコン操作がとても上手でした。
その得意分野を生かして、教室の掲示物づくりをお願いしたところ、
「僕の絵が教室に貼られた!」と誇らしげに笑ったのです。
彼の中で、「自分にもできることがある」という気づきが芽生えました。
人と比べるのではなく、自分の中での“成長”を見つけられた瞬間でした。
🔸 “比較しない”とは、“自分を信じる”ということ
「比較しない」と聞くと、なんだか難しく感じますが、
実はそれは“自分を信じる”という行為に近いのです。
他人の評価よりも、自分のペースを大切にする。
誰かのスピードではなく、自分のリズムで進む。
それが“比較しない”という勇気です。
スプラウツでは、子どもたちが一歩進んだとき、
その“過程”を丁寧にほめます。
「昨日より自分で考えられたね」「前よりも少し長く集中できたね」――
そんな小さな成長を見つけて伝えることで、
子どもは“自分を認める力”を育てていきます。
🔸 大人が持つ“比較のメガネ”を外す
実は、子どもたちを苦しめている“比較”の多くは、
大人の側の視点から始まっています。
「みんな同じようにできてほしい」
「遅れていると心配」
「〇〇くんはもうできてるのに」
そんな思いは、子どもへの愛情から生まれているのですが、
子どもの心には「ぼくはダメなんだ」というメッセージとして届いてしまうことがあります。
スプラウツでは、保護者面談の際にも「その子のペース」を尊重する話を大切にしています。
“できる・できない”ではなく、
“昨日よりどんな顔で過ごしていたか”を一緒に振り返ります。
子どもの変化は、結果ではなく表情の中に現れるからです。
🔸 “比べない環境”が生む安心と自立
スプラウツの教室には、テストの点数を貼り出す掲示もなければ、
競争をあおる仕組みもありません。
その代わり、子どもたちが「できた!」と感じた瞬間を、
一緒に喜び合う空気があります。
ある日、プリントを終えた生徒が言いました。
「先生、ぼく、まだ終わらないけど、昨日より速くできた!」
その言葉の中に、“他人ではなく自分との比較”がありました。
それこそが本当の成長です。
比べられない環境の中で、子どもたちは安心して自分を出し、
自分のリズムで伸びていきます。
“比べない”ことは、自分を大切にする力を育てる第一歩なのです。
🔸 “ありのまま”を認め合う社会へ
“比較しない”という勇気は、教育の中だけでなく、
私たち大人にも必要な心の姿勢です。
社会の中で、人と比べず、自分らしく生きることは簡単ではありません。
でも、それを実践できる子どもが増えれば、
世界はもっとやさしく、多様な価値を認め合う場所になるはずです。
スプラウツの願いは、
「違っていてもいい」「そのままでいい」というメッセージを
子どもたちの心に届けることです。
そして、その子が自分のペースで歩み始めるとき、
私たちは静かに見守り、応援し続けたいと思います。
🔸 “比べない”から見える、本当の笑顔
人と比べることをやめると、見えてくるものがあります。
それは、“昨日の自分”です。
そして、その自分の中に、確かに育っている“成長”があることに気づきます。
スプラウツの教室では、
今日も一人ひとりが自分のペースで進んでいます。
競争のない場所で、自分の内側から湧き上がる力を信じながら――。
“比較しない”という勇気。
それは、生きる上でいちばん大切な、自分へのやさしさなのかもしれません。
🌱
by Dr.Kazushige.O
(一般社団法人 自在能力開発研究所/Sprouts フリースクール代表)
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