
学力・人間力向上のためのブログ
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2025/10/19
🌙 「イメージの歌」と“生きる”という選択 ― 吉田拓郎の声に重ねて ― by Dr.Kazushige.O
Ⅰ.静かな歌に流れる“生きる”という問い
吉田拓郎の「イメージの歌」を久しぶりに聴いたとき、
その穏やかな旋律の中に「生きる力」という言葉が浮かびました。
強く主張するわけでも、正しさを説くわけでもない。
けれどその優しい歌声の奥には、確かな“問い”が流れています。
生きるとは何か。
それは、何かを選び続けることなのではないか。
この曲には、「夢を持て」「前に進め」という励ましの言葉は出てきません。
ただ、人生の中で迷い、立ち止まりながらも、
それでも自分のリズムで歩いていく人間の姿が、
静かに描かれているように感じるのです。
Ⅱ.「選ぶこと」は、教育の原点にある
教育という営みを長く続けていると、
子どもたちが「何を選ぶか」よりも、
「どうやって選ぶようになるか」が大切だと感じます。
誰かに言われたからそうするのではなく、
自分の中にある小さな声に耳を傾け、
迷いながらも、自分の意志で決める。
それができた瞬間、
子どもは確かに“成長”しています。
スプラウツや聡生館で学ぶ子どもたちの姿を見ていると、
選択の瞬間にこそ、彼らの「生きる力」が表れます。
それは、授業の中だけでなく、
休憩中の一言、誰かへのまなざし、
あるいは“今日は話さない”という沈黙の中にも存在しています。
教育とは、知識を与えることだけではありません。
子ども自身が「選び取る力」を育てること。
それが、人生を生き抜くための最も根源的な学びです。
Ⅲ.不登校・引きこもりの子どもたちが教えてくれたこと
フリースクールSproutsで出会う子どもたちは、
まさに「選ぶこと」と日々向き合っています。
学校へ行くか行かないか、
人と話すか、話さないか。
その小さな選択にさえ、心のエネルギーを多く使っています。
けれど、その“選べない時間”にも意味があります。
外から見れば止まっているように見えても、
心の奥では、次に進むための準備が静かに行われているのです。
「今日は行かない」「今日は何もしない」
その選択にも意志がある。
そしてその意志こそが、彼らの“生きている証”です。
拓郎の「イメージの歌」は、そんな彼らの姿に重なります。
焦らず、無理をせず、
それでも少しずつ自分のペースで前に進もうとする姿。
その不器用さの中に、
人間が生きるということの“ほんとうの強さ”があるのだと思います。
Ⅳ.「正しい選択」ではなく「納得できる選択」へ
多くの子どもたちは、「間違えたくない」という気持ちを抱えています。
しかし、生きる上で“正しい選択”など最初から存在しません。
大切なのは、
自分で選び、自分で責任を引き受けること。
その積み重ねの中で、人は“納得できる生き方”を見つけていきます。
教育の本質もまた同じです。
教師や親がすべてを決めてしまうのではなく、
子どもが「自分の答えを出せる」時間を保証すること。
吉田拓郎の歌は、その感覚にとても近い。
決して「これが正解だ」とは言わない。
けれど、聴く人に“自分なりの道を歩いていい”と語りかけてくれる。
それが、教育にも人生にも必要なメッセージではないでしょうか。
Ⅴ.未完成のまま生きる勇気
人は誰しも、途中の存在です。
何かを学びながら、何かを失い、
また別の何かを見つけていく。
拓郎の「イメージの歌」には、
そんな“未完成のままで生きる人間”へのまなざしが感じられます。
教育の場でも同じです。
完璧な子どもなどいません。
でも、“未完成だからこそ育つ”のです。
失敗も、沈黙も、葛藤も、すべてが成長の一部。
そして、教育者にとっても同じことが言えます。
教える側もまた、迷い、学び、選び続ける存在です。
生きるとは、完成を求めることではなく、
“音を鳴らし続けること”。
その音がときに外れても、リズムが乱れても、
それが今の自分の音であるなら、それでいい。
Ⅵ.教育とは、「人生の旋律」を支えること
吉田拓郎の歌が語りかけてくるのは、
「人生にはひとつのメロディしかないわけではない」ということ。
静かに聴けば、誰もが自分の中に音を持っています。
それは他の誰かの音と重なり、
時にぶつかりながら、世界に響いていく。
教育者の役割とは、
その“音”を消さないように支えることではないでしょうか。
子どもが自分のペースで歩み、
自分の声で語り、自分のリズムで生きられるように――。
そのための環境を整えることが、教育の根幹です。
Ⅶ.おわりに ― 「生きることは、選び続けること」
生きることは、決して単調な道ではありません。
迷い、止まり、やり直す。
その繰り返しの中にこそ、人の成長があるのです。
吉田拓郎の「イメージの歌」は、
そんな“生きるという選択”を静かに肯定してくれる歌。
そして、私たちが教育を通して子どもたちに伝えたいことも、
まさにその一点にあります。
生きるとは、選び続けること。
その選択の連なりこそが、
人が“自分という物語”を紡いでいくことなのだと思います。
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