>�T.静かな歌に流れる“生きる”という問い
吉田拓郎の「イメージの歌」を久しぶりに聴いたとき、
その穏やかな旋律の中に「生きる力」という言葉が浮かびました。
強く主張するわけでも、正しさを説くわけでもない。
けれどその優しい歌声の奥には、確かな“問い”が流れています。
生きるとは何か。
それは、何かを選び続けることなのではないか。
この曲には、「夢を持て」「前に進め」という励ましの言葉は出てきません。
ただ、人生の中で迷い、立ち止まりながらも、
それでも自分のリズムで歩いていく人間の姿が、
静かに描かれているように感じるのです。
�U.「選ぶこと」は、教育の原点にある
教育という営みを長く続けていると、
子どもたちが「何を選ぶか」よりも、
「どうやって選ぶようになるか」が大切だと感じます。
誰かに言われたからそうするのではなく、
自分の中にある小さな声に耳を傾け、
迷いながらも、自分の意志で決める。
それができた瞬間、
子どもは確かに“成長”しています。
スプラウツや聡生館で学ぶ子どもたちの姿を見ていると、
選択の瞬間にこそ、彼らの「生きる力」が表れます。
それは、授業の中だけでなく、
休憩中の一言、誰かへのまなざし、
あるいは“今日は話さない”という沈黙の中にも存在しています。
教育とは、知識を与えることだけではありません。
子ども自身が「選び取る力」を育てること。
それが、人生を生き抜くための最も根源的な学びです。
�V.不登校・引きこもりの子どもたちが教えてくれたこと
フリースクールSproutsで出会う子どもたちは、
まさに「選ぶこと」と日々向き合っています。
学校へ行くか行かないか、
人と話すか、話さないか。
その小さな選択にさえ、心のエネルギーを多く使っています。
けれど、その“選べない時間”にも意味があります。
外から見れば止まっているように見えても、
心の奥では、次に進むための準備が静かに行われているのです。
「今日は行かない」「今日は何もしない」
その選択にも意志がある。
そしてその意志こそが、彼らの“生きている証”です。
拓郎の「イメージの歌」は、そんな彼らの姿に重なります。
焦らず、無理をせず、
それでも少しずつ自分のペースで前に進もうとする姿。
その不器用さの中に、
人間が生きるということの“ほんとうの強さ”があるのだと思います。
�W.「正しい選択」ではなく「納得できる選択」へ
多くの子どもたちは、「間違えたくない」という気持ちを抱えています。
しかし、生きる上で“正しい選択”など最初から存在しません。
大切なのは、
自分で選び、自分で責任を引き受けること。
その積み重ねの中で、人は“納得できる生き方”を見つけていきます。
教育の本質もまた同じです。
教師や親がすべてを決めてしまうのではなく、
子どもが「自分の答えを出せる」時間を保証すること。
吉田拓郎の歌は、その感覚にとても近い。
決して「これが正解だ」とは言わない。
けれど、聴く人に“自分なりの道を歩いていい”と語りかけてくれる。
それが、教育にも人生にも必要なメッセージではないでしょうか。
�X.未完成のまま生きる勇気
人は誰しも、途中の存在です。
何かを学びながら、何かを失い、
また別の何かを見つけていく。
拓郎の「イメージの歌」には、
そんな“未完成のままで生きる人間”へのまなざしが感じられます。
教育の場でも同じです。
完璧な子どもなどいません。
でも、“未完成だからこそ育つ”のです。
失敗も、沈黙も、葛藤も、すべてが成長の一部。
そして、教育者にとっても同じことが言えます。
教える側もまた、迷い、学び、選び続ける存在です。
生きるとは、完成を求めることではなく、
“音を鳴らし続けること”。
その音がときに外れても、リズムが乱れても、
それが今の自分の音であるなら、それでいい。
�Y.教育とは、「人生の旋律」を支えること
吉田拓郎の歌が語りかけてくるのは、
「人生にはひとつのメロディしかないわけではない」ということ。
静かに聴けば、誰もが自分の中に音を持っています。
それは他の誰かの音と重なり、
時にぶつかりながら、世界に響いていく。
教育者の役割とは、
その“音”を消さないように支えることではないでしょうか。
子どもが自分のペースで歩み、
自分の声で語り、自分のリズムで生きられるように——。
そのための環境を整えることが、教育の根幹です。
�Z.おわりに — 「生きることは、選び続けること」
生きることは、決して単調な道ではありません。
迷い、止まり、やり直す。
その繰り返しの中にこそ、人の成長があるのです。
吉田拓郎の「イメージの歌」は、
そんな“生きるという選択”を静かに肯定してくれる歌。
そして、私たちが教育を通して子どもたちに伝えたいことも、
まさにその一点にあります。
生きるとは、選び続けること。
その選択の連なりこそが、
人が“自分という物語”を紡いでいくことなのだと思います。
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